アトピー性皮膚炎の治し方がわかる本

アトピー性皮膚炎とは何か~アトピー性皮膚炎治療の問題点~対症療法としてのステロイド使用

現代のアトピー性皮膚炎治療のどこが問題なのでしょうか。最近では、「薬物の投与を極力控え、自然治癒力を活性化させて治す」という医師が増えてはきましたが、それでも結局、治療の主流派相変わらずステロイドである場合が多いのです。

私は、13年前に出版した『アトピー性皮膚炎はこうして治す』『アトピー性皮膚炎は温泉で治る』(現代書林刊)で、アトピー性皮膚炎治、喘息、リウマチ、膠原病など、アレルギー疾患者には自律神経失調が関与していると唱えました。したがって、「それらの疾患者の身体から、代表的な自覚症状である手・足・身体の『極度の冷え』、手足が冷たくて夜も眠れない、夏でも寒い寒いとカイロを抱いているような異常状態、また、異常な倦怠感、違和感、肩・首・背中のこり、便秘、下痢、汗が出ない、異常な多汗、生理不順、生理の停止等々の自律神経失調症の症状を改善し、取り去ることができるような『治療法』を施せば、アレルギーの症状は自然に消退する」と説いたのです。そしてそれらの「説」は今日間違っていないことが証明されたのです。

人の身体は徐々に自律神経失調の症状が強くなれば必ず免疫力は低下します。免疫力が低下すると身体の防衛を目的に、抗原抗体反応(免疫システム)がズレた働き(I型アレルギー=アトピー性皮膚炎、喘息、鼻炎、花粉症、蕁麻疹など)をするか、自己免疫(Ⅱ型アレルギー=リウマチ、突発性血性板減少性紫斑病、Ⅲ型アレルギー=膠原病、急性腎炎などの自分の身体は自分で攻撃するという状態)に陥るかのどちらかの「警告信号」が発せられます。

人間の身体は、常に危険にさらされています。空気中にはさまざまな雑菌が浮遊し、食物にも多少なりとも「病原菌」や「細菌」などが付着しています。また、身体にとって有害な物質(化学物質など)は、あらゆる経過をたどって体内に運ばれてきます。

そうした病原菌や細菌、有害な物質などの影響を常に受けているにもかかわらず、私たちは四六時中病気になっているわけではありません。それは、人間の身体が外的から身を守るための機能を生まれながらにして備えており、それらが体内に侵入してきた場合「抗体」などをつくって退治する防御・防衛システムを持っているからです。

つまり、人間には常に一定の状態で、健康であることを保つホメオスターシス(恒常性維持)が働き身体は防衛システムで守られているのです。しかし、ホメオスターシス、免疫システムは常時最強であるとはいえません。ある時は強く、そしてある時は弱くなり、その人の日常生活の善し悪しによって「免疫力」つまり「生命力」には毎日、強弱の差が生じます。その免疫力の弱体化が「抵抗力」のない身体であり、さまざまな細菌、ウイルスの侵略を許すことによって人々は病体に陥るのです。

最近騒がれている「感染症」の問題ですが、感染者はありとあらゆる薬物治療で、免疫力が極度に低下しているお年寄りやまたある治療によって慢性的に薬物治療を受けていたり手術後で免疫力が回復していない人々(子供も含めて)また不規則な生活により慢性的に疲労を蓄積し、免疫力・抵抗力が極端に落ちている人々です。したがって、常在菌といわれる単なる雑菌(O-157、MRSA、レジオネラ菌等)にも簡単に冒されているのです。決して「食事」が悪かった、「設備」が悪かった、機器(24時間風呂)に問題があったのではなく、その感染した患者の体に問題(極度のな免疫力低下)があったのです。なぜならば、普通の免疫力を持ち合わせている人々は子供であっても感染しないからです。

このように、人間の生命維持に一番大切な働きを行なう「免疫システム」に、機能の低下が起こる事態が発生することがあります。つまり、外敵と闘う戦力の低下が起こり敵・味方の区別がつかない状態で味方を攻撃したり、まったく関係のないものを攻撃してしまう。ズレた攻撃、狂った攻撃がそれなのです。

アレルギー疾患のⅠ型であるアトピー性皮膚炎・喘息などは、自分の身体に無害なものを「有害」であると錯覚し、ズレた過剰な攻撃をしかけている代表例です。また、Ⅱ型のリウマチ、Ⅲ型型の膠原病などは、自己(蛋白質や細胞等)を攻撃するという皮肉な結果をもたらします。このように主なズレた働きがもとで、アトピー性皮膚炎の症状は現れます。

そして、卵、牛乳、大豆という三大アレルゲンから始まり、ありとあらゆる食べ物、ハウスダスト、ダニ、花粉などの人体にとって無害なアレルゲンを有害だと判断し、抗体をつくって攻撃をしかけてしまうという、まったく困った状態が続くことになります。

このように「ズレ」て働くような免疫システムならば、その免疫を少し低下させて、あまり働かないように押さえ込んでみたらどうでしょうか。発想としては、最初はこんなものだったのかもしれません。確かに免疫を押さえ込むことによってアトピー性皮膚炎の症状はピタリと治まってしまいます。こうしてステロイド剤(免疫抑制剤)は、アトピー性皮膚炎により生じた「痒み」「炎症」を治療する目的で開発、使用されるようになりました。その効果があまりにも顕著であるために、長期運用することによって、その効果の何倍の副作用によるダメージを受けることなど計算外だったのでしょう。また、3年~5年という長い年月の臨床試験を行なわなかったのも事実なのでしょう。

しかしながら、免疫を抑制し低下させることにより「痒み」を抑えることは可能になりましたが、これらの薬剤は、免疫が異常をきたした原因については何ら治療することができません。ステロイド剤が、「原因療法(病気を原因から治す治療法)」ではなく「対症療法(病気より生じた症状を治療する方法)」といわれる所以がここにあります。

日本においても、昨年臓器移植法案の成立によって、さかんに臓器移植手術が行なわれるようになりましたが「臓器移植」の最大の問題点は、「拒絶反応」です。人間の身体を守っている「免疫機能」は、移植によって体内に入ってくる他人の臓器を「非自己」つまり異物であると認識します。したがって、当然それらを排除しょうとする力が働くことにより放っておけば免疫が攻撃をしかけます。そして拒絶反応が起こり、手術は成功しても患者は死亡することが多かったのです。

そこで開発されたのが「免疫抑制剤」であり、免疫を抑え込み、働きを低下させることで拒絶反応を抑え、生命維持をはかるのです。しかし残念なことに、一回の投与で拒絶反応がおさまればよいのですがそうはいきません。現状では、移植患者はこの免疫抑制剤を一生使い続けなければ生命を維持することができないのです。そのために、免疫力低下によってさまざまな「感染症」を併発することになります。

人間の身体は、非自己を自己として認知することは出来ません。異物はあくまで異物と判断します。これは、本来人間の持つ正常な免疫作用です。したがって術後、体力がつき健康体に戻れば戻るほど拒絶反応は強くなります。しかし、そうなれば生命維持が困難になります。したがって、拒絶反応が起きる度に、また起きないように常に免疫抑制剤を使用して生きていくことになります。

アトピー性皮膚炎の場合も、ズレた過剰な働きをする「免疫システム」が免疫抑制剤ステロイド使用により、その機能を徐々に低下させ、機能低下が確実になった段階で、ピタリと症状を消退させてしまいます。このためステロイド剤はアトピー性皮膚炎の特効薬としての「認知」を得ることになりました。実に素晴らしい効き目の強い薬物であり、たちまちのうちにその症状が治ってしまうのですから、「魔法の薬」として拝め奉られてきても不思議ではありません。しかし、残念ながら臓器移植後の拒絶反応を抑えるが如く、アトピー性皮膚炎においても、この薬物の継続的投与(常用)が欠かせないという危険性は知る由もなかったのでしょう。

このようにしてステロイド剤は1950年代よりたちまち全国の医療機関で使用され始めました。わが国で厚生省が発売を許可したのは1953年、昭和28年でした。この時期まで老人性白内障はあったにせよ、若いアトピー性皮膚炎患者に「白内障」という眼障害者は少なかったはずです。わずか5年程度で「白内障」で失明、弱視という薬害副作用問題が激増し始めたのは事実です。

このように「諸刃の剣」と呼ばれたステロイドがもたらす副作用は、使用し続ける患者を確実に侵し始めました。実際に、1970年には眼障害など、その重篤な副作用が医療界でもすでに指摘されています。

しかし残念ながら、医療界は顕著なステロイドの効果のみに眼を奪われ副作用に配慮することをしませんでした。確かに良心的な医師の警告も数多くありましたが、結局は黙殺されたのです。現代医学が、アトピー性皮膚炎の患者をはじめ他の疾患者に対し、人の病を癒す医療から逆に「病からの回復を長引かせる」「慢性化させる」「さらに難治化させる」そして「障害者をつくり出す」医療へ変化し、薬物至上主義の治療に陥ったのは、このステロイドの開発とその多用が原因でもあるでしょう。

現代医療は、このように患者にとって結果的にとんでもない過ちを冒しています。これらのステロイド剤の使用をやめない限り、永久にアトピー性皮膚炎を「治すことを手助けする治療」にはなりません。なぜならば病体から健康体へ治ろう、戻そうとする治癒系の働き(自然治癒力・免疫力向上)を基本的に阻害し、逆にそれらの働きを抑え込む薬物使用の治療が患者の役に立つわけがないからです。これらの理屈は、読者にもよく理解いただけるでしょう。

最近では、アトピー性皮膚炎は「難病ではない、ごく当たり前の病気なのだから、ごく当たり前の治療をすれば何の問題もない」という主張もあるようですが、やはりアトピー性皮膚炎は「難病」です。世界中のアトピー性皮膚炎患者が、また慢性皮膚炎患者が、今日も有効な治療法がないとされ、治らないまま相変わらずステロイド剤服用、ステロイド塗布を中心とした治療を行なっています。このような対症療法による治療法は、民間療法を含め数百種類に達します。

しかし残念なことに日本中の、いや世界中のどんな治療法でもアトピー性皮膚炎は治っていません。これは「事実」です。ごく軽症者であれば、たまたまよくなった人はいるでしょう。しかし、なぜ治ったのかが分かりません。そしてなぜ治らないのか、どうしたら治るのか、世界中の医師たちが分からままでいるのです。なぜでしょうか。

それは、皮疹という身体の「部分」のみの症状に気を奪われホリスティックな観点から身体を診ないからです。患者の身体の異常状態の改善に努めようとはしないで、皮疹を繕う修理、修復のみの薬物治療を施すことしか考えていないからです。

つまりそれらはあくまでも「対症療法」であり、その病気を治すための治療法ではありません。したがって、永久に「病気」そのものは治りません。ある治療によって皮疹は一時的に治ったようにみえても、それは完治しているわけではなく、いずれ何日もしないうちに症状が再発してくるのは間違いないのです。

発症後間もない症状やあるいはごく軽症のアトピー性皮膚炎の場合には、少量でもステロイドを使用すれば次に発症してくるまでの間隔は長くなります。そのため、「その間は治っていた」「薬を塗って治った」と判断しがちになります。また数回のわずかな使用によって、その後まったく症状が出ないで治ってしまったという人々もいるでしょう。しかし、その場合でもステロイドがアトピー性皮膚炎を治したわけではありません。たまたま身体の「異常状態」が毎日の生活の中で消退したために、アトピー性皮膚炎も消退しただけのことです。

そのような人のアトピー性皮膚炎は、ステロイドを使用していなくても多少時間はかかったにしろしぜんと消えていたはずです。実際、ステロイドを使用しなくても、自然にアトピー性皮膚炎の症状が出ない身体に変わっていく人もいます。昔から言う「大きくなれば自然にアトピー性皮膚炎は治る」が、これにあたります。現在のようにステロイドが使用されていなかった時代には、成長の過程で、そして毎日の生活の中で身体を「丈夫」にする、つまり免疫力、抵抗力を強めることができたため自分の身体で自然と消退させることも可能だったのです。

アトピー性皮膚炎患者の痒み・炎症の発症の原因は、腎臓の上にある副腎という小臓器のステロイドホルモン産生、分泌機能の低下にあるわけで毎日その人に必要なホルモンをまかないきれない、その足りない分が痒み・炎症という症状となって現れているのです。したがって常に外からステロイドホルモンを入れてやらないと痒み・炎症は続いて、次第に症状は強くなっていきます。

そのために副腎皮質ホルモン(ステロイド)を常用することになります。しかし常用が続けば続くほど副腎は外からのステロイドホルモンに頼り、その機能を低下させ仕事をしなくなり難治化を招いていくのです。
このようにステロイドを多用し、軽症から中症状に移行すると身体は「ステロイド依存症」に変化しているのでステロイド使用を中止すれば、その発症する間隔も短くなります。しかも、症状は次第に強いものになります。薬物使用の治療は、一時的にその症状を抑え込む治療法であるために「完全に治る」ことがありません。

また、血液検査などによりアレルギーを誘発する物質を特定し、そのアレルゲンを遠ざける手法もあります。しかし、食事制限、断食、ハウスダスト、空気清浄器を使用したダニ除去室などについては、それを実行している間は症状の軽快、つまり改善が認められますが止めると元の症状に戻ってしまいます。そもそも長い間の食事制限や断食の生活は難しいことですし、空気清浄器付きのダニ除去室の中で一生暮らすような生活は続けられるものではありません。仮にそのようにしたとしても、いったん外に出て普通の生活に戻れば、また症状は増悪の状態に落ち込みます。

つまり、対症療法を行ないながら体質を改善したり、またアトピー性皮膚炎を発症しない身体に変えていくということは難しいということなのです。しかし現在の日本におけるアトピー性皮膚炎治療の状況をみると、医師の間ではこれらの対症療法以外のものは、ほとんど行なわれていないのが現状のようです。少数ではありますが医師の中には、ステロイドを極力控え薬物から離脱させ治癒力を向上させて治すという治療法を行なう良心的なクリニックも存在します。

そのひとつは入浴湯治を勧めるクリニックですが、今回の民間療法バッシングで分かる通り、私共と同様、目の敵にされTV・週刊誌で理不尽な攻撃を受けました。つまり現在アトピー性皮膚炎治療界ではステロイド使用を控えた治療を行なうクリニックをやり玉にあげて、徹底排除を行なっているのです。そしてすべて免疫抑制剤ステロイド使用の対症療法のみの治療で強引に足並みをそろえる考えのようです。このように『赤信号みんなで渡れば恐くない』の発想では済まされない問題です。世の中の人々も、その「違反」を決して見逃してはなりません。