人は誰しも病気を治すために免疫つまり自然治癒力(ホメオスタシス,生体恒常性維持機能)を備えている。その病気を治すための条件を生活の中で満たして、自然治癒力を働かすことが叶えば薬物に頼ることなく健康体に戻すことができる。不治の病とみなされている「がん」でさえも例外ではない。
古来「病」は「気」からと言われている、そして病気は「気」が「病」むと書く。それは人間とは心身が一体となった存在である以上、自然治癒力を働かせるような日常生活のあり方とは当然、精神面の「気」の持ちようを含むからである。
精神面を含めた日常生活のあり方が人を病気にしたり、快気つまり健康にしたりしている。自然治癒力とは体の単なる生理的な機能ではない。その人の生きる姿勢と密接に結びついている。自然治癒を働かせて病気と立ち向かうという時は、個々の症状、個々の臓器をバラバラに見るのではなく、心身を一体のものとして把握しなければならない。
統合的な見方、つまりホリスティック(全身、全体的)な観点が求められる。自分の体は自分が一番分かっているはず。そうした一般の人々の目線で見た時、「がん」とは一体どういう病気なのだろうか。私は長年この事を考え続けてきた。
若い頃、家族が特定疾患の膠原病(SLE)で苦しんでいた時、免疫抑制剤プレドニンの「薬漬け」治療に疑問を抱き、強引に薬から離脱をはからせ、自然治癒を生かすものとして、日本古来の温泉湯治こそ、健康回復への王道であると信じて数年間、温泉湯治療法を試み難病を見事に克服できた。
そうした経験から難病中の難病と見られている「がん」についても抗がん剤、放射線治療などの化学療法に頼ることなく、温泉湯治を軸にした日常生活の改善で、血中のリンパ球を増やし、免疫力を高めることさえ叶えば、がんを克服し健康体に戻すことができるという確信にいたった。
本書は私なりのがんの理解を踏まえて「がん」という病気を難しくとらえず、誰にでも理解できて、誰でも気軽にできる、また誰でも克服できる体に優しい治療法として、温泉湯治療法を取り入れた具体的な治し方を分かりやすく説いている。私は過去30数年間「がん」を筆頭にアレルギー疾患のアトピー性皮膚炎、リウマチ、膠原病などさまざまな疾病を抱える人々が温泉湯治施設で自然免疫療法を学習し、実践する人々をサポートしてきた。具体的には「温泉湯治」を軸とした日常生活の大切さ(食生活、睡眠、運動、学習)、そして自然治癒力の素晴らしさを実体験で経験させることから始まる。
それは人々に備わる偉大な力、「内なる治癒力」を「湯治」という手法を用いて真に目覚めさせ、新陳代謝を活発にし、免疫力を高めるためには何が大切かを学び、さらに実践により自らの体を癒す学習療法、つまり「健康自然塾」であり、その学習者は延10万人を超えている。
ほんの数年前まで難治性疾患で人生を悲観していた人々が薬物を控え、薬物に頼らず健康体を取り戻し、輝かしい人生を再スタートする。そのような感激に溢れた喜ばしい表情を数万例とみてきた。それらの人々の中で、「がん」患者の温泉湯治回復の経過を基に、本書では自然免疫療法の指針として、「がん」に対する内なる治癒力、自然治癒の驚くべき力を、そして術後の再発を防ぎ、さらに生存率を飛躍的に伸ばす手法について述べていく。
世の中にあなたの「がん」を魔法のように治せる医師がいれば良いのだがそれはいない。また魔法のように治せる「特効薬」も「サプリメント」も世の中にはない。しかし、あなたの「がん」を魔法のように「劇的に治せる人」がこの世に一人だけいる。それは医師でも薬でも病院でもない。他ならぬ「あなた自身」であり、それも活性化されたあなたのリンパ球免疫細胞・NK細胞のみである。それらをしっかりと学習して真に「がん」を克服してほしい。この本がそのための一助となれば本望である。