アトピー性皮膚炎の治し方がわかる本

症状別アトピー性皮膚炎の治し方~気付きが大事な軽症状

回復までの経過は、ステロイドの使用期間や身体へのダメージの度合いによって、さまざ、だといっていいでしょう。使用していないか、もしくは使用の頻度が少なく身体への影響もわずかな場合には、「ステロイド依存症」または「ステロイド皮膚症」という二次疾患が併発していないため必要条件を満たす生活さえ行なえばその回復にさほどの期間を要さない場合が多いのです。

しかし、「熱心」なステロイド治療を行なった人、つまり中派状、重症状の患者の場合は、「ステロイド皮膚症」を併発しているため、皮膚そのものへのダメージだけではなく内分泌系全般の機能異常や正常な罷免機能もさらに損なわれています。そのため、感染症への抵抗力の低下などが認められ、これにはまず正常な免疫機能が作用する身体に戻すための必要条件を満たすことを第一に考え、次に「ステロイド皮膚炎」の改善をはかり、その後「アトピー性皮膚炎」の改善を行なうことが必要となってきます。

当然ながら、このステロイド皮膚症、アトピー性皮膚炎を改善するための必要条件には重なる部分も多くあります。そのため、「ステロイド皮膚症」の改善を行なっている間に自然と「アトピー性皮膚炎」の改善も行なわれますが、いかんせん身体の影響の度合いが多ければ多いほど、回復の期間も回復するために必要な条件も増えていきます。

先にも述べたがアトピー性皮膚炎とは本来、「警告信号」的役割の強い疾患です。警告信号程度が「軽症」の状態であれば、その回復は方法さえ誤らなければたやすいもの。つまり警告を必要とした生活の改善を行なうだけでよいからです。しかし薬物を使用したり、アトピー性皮膚炎の原因となった悪い生活を続けるうちに、警告信号を超えて二次疾患を併発した状態では明らかに「疾患」としての治療が必要になります。

本章では、実際の症状別アトピー性皮膚炎の回復状況について述べていきますが、これは「正しいものの考え方」や「治すための必要条件」を満たし、あくまで自然療法という「モノ」を使わず自然治癒力のみに頼った場合の状況であり、そうでない場合にはこの過程とは異なることをあらかじめご承知ください。

ステロイドを多用していないか、もしくは他の薬物も含めて使用した期間が短く薬剤による身体への明らかなダメージが認められない状態が「軽症」の部類に入るといえます。

ちなみに身体へのダメージがどのくらいのものであるかを検証するには、使用しているステロイドを中止してみるとわかります。使用中止後、3ヶ月以上経過しても離脱状態などの身体の変化が認められなければ、身体への影響はさほど強くないと考えられ軽症と判断してよいでしょう。

軽症状では、皮膚の湿疹・炎症は、本来の身体の異常状態を警告するために出現しており、いわゆる「単純性アトピー性皮膚炎」だということができです。そのため、アトピー性皮膚炎を治すために必要な条件つまり1日1時間から2時間の湯治を実行し充分な睡眠を確保するという条件を満たすことができれば、大方の場合、自覚症状である痒み・炎症は12ヶ月から14ヶ月程度消退します。症状の出ない身体つまり完治の状態までになるには、早い人で15ヶ月遅くて18ヶ月ていどの期間が必要です。

ただし、あくまで「必要な条件」を満たせばです。湯治を頑張って実行しても習慣となってしまった悪い生活行動や生活環境を変えなければ、当然いつまでたっても身体は警告を必要とし炎症・痒み・湿疹は出続けることになります。たとえ一時的にそれらの症状が治っても、季節の変わり目や空気の乾燥期、また、風邪をひいた時や睡眠不足が続き体調が悪くなった時、ストレスなどで疲労感が強い時など、身体の変調によりいつでも再びアトピー性皮膚炎は現れます。

このような場合、身体のコンディションは健康体と病体のぎりぎりの線上にあり、そのため免疫力・抵抗力が一定のラインより低下すると発症し、逆に一定のラインより上昇すると消退するといったことを繰り返します。したがってアトピー性皮膚炎を完治させるためには、常に身体の機能を一定ラインより上の段階に維持する生活習慣が大切になってくるのです。

このように「軽症」の段階の人の中には、警告であるアトピー性皮膚炎の症状が体調などにより発症したり消退したりする人がいます。しかしそのような軽症の人が、「放っておけばそのうち消えるからいい」と正しい生活条件を満たさないでいるのは、まったくもって愚かしいといえます。なぜなら、アトピー性皮膚炎を引き起こしている生活の習慣や環境は、アトピー性皮膚炎を「終着駅」として現しているわけではないからです。そのことによる終着駅は、成人病つまり「生活習慣病」なのです。

繰り返し述べてきたようにアトピー性皮膚炎は警告的疾患なのです。それはその後ろに見え隠れしている「本当の疾患」初期症状にすぎないのです。
たとえ軽症にあるにしろアトピー性皮膚炎をあなどってはいけません。放っておいて症状が自然に消えても意識的に生活面の改善が行なえていないのであれば、余計にしんぱいしたほうがよいでしょう。

アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が出ている間は、ある意味で身体の防衛機能は正常に働いていると考えてもよいのです。確かに「歪んだ」働き方ですが身体を「真の疾患」「生命に異常をきたす状態」から防衛するために働いているといえるからです。

したがって軽症のアトピー性皮膚炎にこそ、これらの「気付き」が大切でしょう。