小川秀夫の湯治の目安

はじめは自宅で湯治を

湯治とは「湯で治す」ひとつの治療法である。日本においては 明治時代に入り、時の新政府が西洋医学を導入するまで、昔から湯治は多くの人が手軽にできる民間療法として効果をあげていた。しかし、いつのころからか近代医学の対処療法が病の治療法の主流になり患者は些細なことでも病院に駆け込み、保険制度、国の予算の割振りなど100年にわたり優遇されてきた。

その時代の流れで湯治を経験する人も方法を知る人も少なくなり2、3日から一週間程度の間を温泉で美味しいものを食べて観光を兼ねてくつろぐことが、湯治、温泉湯治と誤解されているようだ。そして本来の湯治を経験しない人間、正しく理解していない人間が「湯治は古臭い、科学的でない、症状が悪化する」と言うわけである。

困ったことに病状を理解している医者も湯治は治療法であることをを理解せず「入浴は適度にしなさい」と無難な指示をだしたり、ときにはやみくもに禁止の指示をだす。仮に運動療法なら「毎日20分歩きなさい」と明確な指示を医師はだすことができるが、湯治に関しては「湯治」と「入浴」の区別すらわからず、さらには湯治療法としての湯に入っている時間、期間、方法は医師が知ることもなく正しく理解されていない現状がある。

湯治は家庭のお風呂でもできる民間の治療法である。当然、温泉で湯治を行う温泉湯治の方が「温泉の効能」、「温泉地の環境」もあり効果ははるかに大きい。だがアトピー性皮膚炎のように皮膚に疾患がでていると肌に刺激のある塩素の除去など、湯質を選ぶ必要があるが、癌をはじめリウマチ、膠原病、他、ほとんどの生活習慣病は肌に問題がなければ自宅の水道水の湯船でも効果は期待できる。ただし正しく方法を学び毎日継続する心構えは必要である。

最近は手ごろで品質の良い入浴剤や浄水器、入浴機器はドラッグストアー、通販などで販売しているので、ご自身の生活に支障のない予算の範囲で少しづつ工夫して温泉に近づけるとより効果的である。決して最初から無理をして高価な入浴機器を購入したり、経済的な目途もなく温泉湯治場に駆け込んではならない。さだまらない経済的負担は避ける方がよい。自宅で湯治を数週間から2、3ヶ月して「これならいける」と効果を体感し湯治期間の目安が自分なりにたってから湯治場で本格的に温泉湯治を行うとよい。