アトピー性皮膚炎の治し方がわかる本

すばらしい自然治癒力

自然治癒力を高めて健康体を取り戻す

本章では、「自然療法」「温泉湯治療法」により、アトピー性皮膚炎などの難治性疾患を回復させるためにはどのような手法で行なうのか、また、どのようなことが大切であるかを具体的に説いていくことにしましょう。
さて、アトピー性皮膚炎などの難治性疾患を自然療法で癒すためには、何が一番大切なのでしょうか。

それが自然療法の基本です。「薬物治療に依存しない」であることはいうまでもありません。しかし例外的に、患者によってケース・バイケースで使用せざるを得ない、また、使用した方が良いケースもあります。しかし、それらの判断は患者自身が行なうことが前提です。
したがって、自然療法により病体を健康体に戻すためには、いかに上手に今まで常用してきた薬物から離脱をはかるかということが重要になってくるのです。

なぜなら、ステロイドを多用しながら湯治を行なっても、まず期待する効果は得られません。したがって、ステロイドを控えることがその基本であることを心得てください。私はこれらを「正しいものの考え方」と説いています。

自然療法により病体を健康体に戻すための大前提は、まずこれらの「ただしいものの考え方」を備えることなのです。

本書を読んでも、「自然療法」の効果が、そして「自然治癒力」がまったく信じられない、信じることができない、理解できないというような人がいます。あるいは家族の中に頭から否定し理解しょうとしない、さらに批判する人がいる場合、自然療法を行なっても、その期待する効果はなかなか得られません。そのような人々は「湯治」をしないほうがよいのです。

なぜなら、患者本人がその気になって一生懸命頑張っていてもすぐ側にいる人が「そんなものでアトピー性皮膚炎が治るなら医者はいらない。きっとだまされているに違いない。薬をやめたら、治るどころかますます毎日悪くなっているではないか。病気を治すのは『医者』であり、『薬』ではないか。薬を使わないで何で病気が治る! すぐに病院へ行け! 病気は病院で治してもらうものだ」と批判する場合があるからです。このような人が家族や周囲にいるようであれば、本人の薬物に頼らない自然療法に取り組む意欲は半減し、したがってつらく長い湯治生活も続けることができません。

病気を克服していく上で同居する家族の協力が不可欠であることはいうまでもないことです。つらい時期に、「大丈夫! きっと必ず治る! だから晩張ろう」と励ます場合と、非難したり、口論の多い生活では本人の精神状態がまったく違ってくるのは自明の理でしょう。幼児・小児の場合でも毎日両親また家族間で大喧嘩ばかりしていたのでは、治るものも治らなくなってしまいます。それらの精神的なものが、患者の病気の回復つまりその疾患者の身体の治癒系に与える「影響」には実に強いものがあり、病状の増悪、軽快に敏感に反応することになるからです。このようにアトピー性皮膚炎の自宅療法は、自宅のお風呂を使って行なうわけですから家族の和と愛情、そして協力が大切であり、一つの「家族療法」ともいうことができます。

私は、本書で「自然治癒力」という言葉をさかんに使用していますが、実は「医学大辞典」にさえ、いまだにその記述がない「用語」であり、もちろん医大の教育でも病気を癒す自然治癒力を説くカリキュラムは存在しないのが現状です。

この「自然治癒力」「自然良能」「自己治癒力」と呼ばれるものは、まったく目に見えないものです。その見えないもので病気を治すということ自体、何となく「うさんくさい」という考え方が、現代の医学界にも、また一般にも広く存在します。特に、現代の医学界では基本的に薬物に依存しないで病気を治す手法は、正当な治療法ではなく、あくまでも「うさんくさい」治療法としてとらえています。ゆえに、どのような「病気」であってもそのような治療法で「治った」ものは、医学的秩序が全くない、でたらめな治療法の症例として扱うのです。つまり彼らは「自然治癒」を医大で教わったことがないから分からないのです。また、自然治癒力は目に見えないものであるから、信じられないというのです。

しかし本当はありとあらゆる疾患つまり「病気」を癒しているのが、この「自らを癒す内なる力」なのです。ところが現在の世の中の常識は、薬が医者が、そして病院が「病気を治す」ということになってしまっています。これらの真実を患者だけでなく世間の人々も充分理解することが必要です。
それでは、自然療法を実践する患者は絶対に病院に行かないのか、絶対に薬物を使ってはいけないのかというとそうではありません。要は、その人の考え方であるから、どうしても薬物を常用しながらまたは薬物を加減しながら自然療法を行ないたいという人もいるでしょう。そういった人々も全国アトピー友の会5万人の中には確かにいるのです。

彼らは1ヶ月に1回、または2ヶ月に1回、自らのかかりつけの病院・診療所、そして全国アトピー友の会の協力病院に行っています。途中、喘息により重責発作を起すことも、また合併症状や感染症に罹ることも当然あります。このような事態には、医師の指示に従い適時適切に薬物を使い緊急時をしのいでいます。

最近では、患者が病院に行って自然療法で温泉療法をしていると医師に告げれば、「そうですか。そうならば薬は控えめにしておきましょう」と薬物の処方を控えるような病院に出会うことも多くなってきています。このように、自然療法や湯治療法に対する医師の理解は、徐々に広まっているようです。また「全国アトピー友の会の会員は、病院に来てもかたくなに薬物投与を拒否する。困ったものだ」という医師の声も相変わらず耳に入ります。しかしその一方で、会員の中にはいまだに薬の処方を受けている人もいます。だが彼らの中にはその薬を使わずに全部捨てている人もいるようです。ある患者は、「薬を拒否すると医師がいやな顔をするし、あとが怖いから一応もらってくるが、まったく使用せずにそのまま放ってある」とも言います。また、湯治開始直後でまだ回復の自覚が得られないつらい時期は、アトピー性皮膚炎患者に限らず、たとえ使用しなくても側に薬があるだけで何か安心感のようなものがあるとも言います。しかし、いずれにしても患者は薬を使用する気はないようです。

アトピー性皮膚炎患者に限らず処方された薬物を使わずに、いわば捨てているのと同じ状態にある薬物の金額は、毎年膨大なものになるでしょう。医療保険から支払われる薬価代金で計算しても、1997年度の医療保険に占める薬価代金の額は、約6兆8千億円です。この3分の1を患者が捨てたと仮定すると、約2兆円、4分の1を捨てたとしても、それらは1兆7千億円という気の遠くなる金額になります。こうした事実からも、我々の税金のむだ使いを防ぐことにもつながるのは間違いないし何よりも自然療法が広まれば広まるほど人々は、薬のみに頼らない、医師のみに頼らない、病院に頼らないそして自らの日常生活を改善し健康な体を取り戻すという健康改革。医療改革につながり、さらに破綻寸前の医療保険制度を救う最良の方法です。現に、全国アトピー友の会やホスメックQOL健康クラブの会員はもちろんのこと、その家族は日課として一日一回30分~40分の「湯治」を取り入れています。日常の生活の中で何が大切かを学び実践し、風邪さえもひかない健康な身体でありベストコンディションで毎日を過ごし、月一回の学集会に参加しています。それらの人々は病院にかからないことを誇りにさらに健康を自慢しあうのが楽しみな人達ばかりです。しかし自然療法を実践する人々が病院へ行き、湯治療法を行なっていると医師に告げただけで、「そんなもので治るわけがない。医学的にも認められていないし、その根拠も学会で発表されていない。そんなもので治ると思っているのなら私のところに来るな! 帰れ!」と怒る医師もいます。

このように自らの治療法の愚かさを反省もせず、相変わらず一部の医師たちはTV・マスコミ業界を強引に納得させ、それらを使って民間療法たたきに躍起になっています。

しかし、患者も世間の人々もそれほどまでに無知ではありません。アトピー性皮膚炎治療界は現在の間違った恐ろしいステロイド治療法を続ける限り、一時的に世の人々をあざむき「顧客」を取り戻すことはできても患者の病院離れはさらに顕著になるはずです。

2000年3月に発売された新薬、それも強力な免疫抑制剤P軟膏の効果? が現れる時期がきます。それもわずか数年後に確実に訪れる「前代未聞の副作用」という大事件の続発によって結果的に更に信用、信頼を失い、その治療法を根底から覆される致命的打撃を負うことになるでしょう。
さらに製薬会社は、現在発売中のP軟膏よりさらに協力な免疫抑制剤を研究開発中であり2001年を目指し発売予定であるということも付け加えておきます。

治すための5つの必要条件

(1)治すことを最優先にした生活

それでは次に、これからアトピー性皮膚炎を「治すための必要条件」について述べていくことにしましょう。主な必要条件は五つであり、これを満たすことができるかどうかが克服への鍵になります。

まず第一条件。アトピー性皮膚炎を治すことにより他に大切なことはない、という心構えになっているかどうかです。「確かにありとあらゆる治療法はやった。しかしどうしても治らないし、このままでは生活に差障りがあり、将来が不安意なってきた。学校、仕事どころではない。何が何でもアトピー性皮膚炎を克服することが先だ」という決意があるかどうかです。
「大きくなれば自然に治りますよ」と言われた昔とは違い、あらゆる生活環境が劣悪化した現代では放っておくだけでは完治は難しいものです。また薬物依存により難治化した患者の身体は、幼児期~少年期~成年期~壮年期とアレルギーマーチを繰り返し、増悪と軽快でさらに難治化するばかりです。つまりアトピー性皮膚炎や喘息の症状が手枷足枷となってその人の人生を支配するのです。

幼児期の発症から大学を卒業し社会人になるまでは何とか薬物でコントロールできても、その頃あらゆる予期せぬ副作用が出現し、そして「障害者」となります。初めて体験するストレス社会の厳しさに身体がついていけずストレスや疲労などを処理・消化できず、その負荷を毎日蓄積する結果となり症状はさらに増悪することになります。

このような時期では、薬物使用により、ある程度はまだ粉飾ができています。したがって、見た目は、どす黒い顔をした常人だが症状としては末期症状であり全身におでき状のデコボコした膿包が吹き出し、異常に倦怠感が強く、また痒みのために夜は眠れず社会生活ができる身体ではあるません。いずれ社会人として脱落する日が目にみえてます。

ステロイドという劇薬を使って炎症や痒みを抑え込み、人生にとってはわずかな日々をしのいだその結果が、それから始まる人生を「障害者」として生きていかなければならないのです。これからは、あまりにも大きな代償ではないでしょうか。これこそ今、大社会問題なにですが、この事実を覆い隠しひたすらこの問題のクローズアップを政治的に抑え込んでいます。これらの副作用における障害を『難病』アトピー性皮膚炎だから発症しても仕方がないと片付けられて結局は泣き寝入りを強いられてしまう患者が、あまりにもかわいそうです。

このような時点になって「離脱」しても、よほどの根性がない限りは這い上がることはできません。私は若い彼らの社会生活の現実をそしてその実態を見てきました。中には最高学府を出て一流企業や官庁に就職し、いずれは有望な国の人材として成長するであろう彼らの哀れなそして悲惨な顛末を数限りなく見てきたのです。

全国アトピー友の会は、「自然療法」「湯治療法」の実践者のサポートとして毎日全国から訪れる人々の集合学習会、セミナー、また個人面談などを行なっている団体です。一度訪問してみてください。見るもの、聞くもの、信じられない事実がそこにあり、そのすべては驚異、驚嘆でしょう。

思いもかけず、ある日突然発症した疾患により、その人の人生が変わります。このようなケースは人間社会にはよくあることでしょう。しかし、アトピー性皮膚炎のように発症後の治療のあり方によって「天と地」の違いが生じ人生の分岐点となってしまう疾患は他にあまり例をみません。

したがって発症時期に、それもごく軽症のうちに治すことが大切なのです。なぜならば、初期段階は薬物の強いダメージを受けていないために回復しやすい状態だといえるからです。そのためには、たとえ軽症であっても躊躇せず治すための必要条件を備え、即実行する勇気が必要になります。

学校、受験、勉強、仕事と、それぞれ大切なことは分かりますが、それよりアトピー性皮膚炎を治すことを「優先」する気持ちがすべてを解決する近道です。この事実をしっかり理解しなければなりません。

私は訪れる医師から「先生の自然療法の実践者は、かたくなに薬物を拒否する。何か変な宗教にでも入信しているにでは、と思えるほど」とか「先生の自然療法、湯治療法でアトピー性皮膚炎が確実に完治できるのは、その手法の強引さにある」といわれることがあります。確かにその通りかもしれません。

医者は治療においてまず患者の生活の優先を第一に考えます。その患者の生活に支障をきたす身体の苦痛を薬物を使って取り除く治療を施します。なぜならば患者がそれを求めるからです。

しかし私の場合は違います。なぜなら自然療法に集う人は、たとえ初めて来訪する人であってもアトピー性皮膚炎に対する「正しいものの考え方」を理解し、それを治すことにより他の大切なことはないという人々だからです。彼らは「真の健康体」と薬物によって症状を抑えた一見健康な「擬似健康体」は、まったく次元がちがうものであることを学習しよく理解しています。

したがって、自然療法を行なう人々は治すための条件の満たし方によって時間はかかりますが、それなりに改善されるのです。つまり、治せない、治らない例外者はもともと「友の会」には入らないし。もちろん考え方の違う人の生活指導は私たちにはできないため、そうした入会者はもちろんいません。つまり一方的に売り込む営業行為は一切しないし、ものの考え方が正しくない人々に自然療法を勧めることなどなおされ出来ないし、しないのです。なぜならば、安易な気持ちや考え方で自然療法を行なってもそれらの人々が治ったためしがないからです。したがって後々トラブルになることが分かっているような人々を迎える事は絶対にしないのです。

したがって言い換えれば、「アトピー性皮膚炎を治すことより他に大切なことはない」という、治るため、治すための必要条件をすべて満たしている患者の集まりであるから途中、心ない人々からどのような非難中傷があろうとも中断せず最後まで頑張って全員治っているだけのことなのです。また自然療法であれば簡単に治ると思い安易な気持ちで来訪する人がいますが、とんでもありません。2年~3年~5年と長く苦しい戦いの日々を共に泣き、共に苦しみ、共に悩み続け、針のむしろに座らされた心境で私達は見守り続けなければならないのです。まさに命を削る思いがする毎日です。

(2)十分な睡眠

さて、第二に大切な条件は、毎日の生活習慣の中で充分な「睡眠」をいかにとるかということです。

アトピー性皮膚炎という疾患の場合、痒みという症状の特異性から患者は昼夜問わず痒みを感じ、そのために夜は熟睡できず疾患者のほとんどの人が常に睡眠不足の状態に陥っています。一日の睡眠時間が4~5時間程度生活している人もいれば、ほとんど眠れずに一日に3~4時間の睡眠で「生きて」いる人もいます。その結果、毎日睡眠不足の状態で学校や仕事に出かけることになります。

アトピー性皮膚炎が難治性であるということは、実はこの睡眠不足が大きく関与しています。睡眠は「癒し」です。毎日、自身にかかる負荷(ストレス、疲れ等)を処理、消化し、明日への体力を備えて健康体を維持巣するためにも、また病んだ身体を健康な身体に戻すためにも必要不可欠なのは充分な睡眠をとることです。つまり、病を癒す基本は薬物投与などではなく毎日充分な睡眠をとることにあります。

したがってアトピー性皮膚炎を治すためには、その患者の学校や仕事などの私生活を優先させ無理に規則正しい生活を送らせることではなく充分な睡眠の確保、すなわち朝は自らが自然に起きるまで誰も起さず寝かせることが大切なのです。個人差はあるが副腎という臓器は夜の10時~11時には副腎皮質ホルモンの産生・分泌をストップし、明け方午前3時~4時頃から、また生産を始めます。そのために、午前1時~3時頃まで掻き続け、眠れない、熟睡できない人でも、明け方あたりからは深い眠りが得られるものです。しかし、ようやく深い眠りに入っても、幼稚園や学校、仕事など、自分の生活を優先しょうとすれば二時間も三時間もしないうちに起きなければなりません。中には、ほとんど朝まで眠れずそのまま起きて学校や仕事に向かう人もいます。このような生活ではアトピー性皮膚炎は永久に治らないことを理解してください。

睡眠時間はわずかでも確かに生命維持はおこなえるでしょう。しかし毎日2~3時間の睡眠では、健康維持は行なえません。場合によっては、それらのわずかな睡眠時間がつづくことにより肉体的・精神的疲労を蓄積させ「過労死」または「突然死」を招くこともあります。

このように睡眠は健康という面を考えた場合、身体に果たす役割から考えてみても、ある一定時間以上は確実に必要なものです。したがって、「睡眠」で健康を改善していくためには、健康維持以上の睡眠時間が必要となってくることはいうまでもありません。個人差があるので一つの目安として捉えていただきたいのですが。健康改善のための睡眠には、幼児で約12時間、小児で約10時間、中学生以上の場合には最低でも8時間が必要です。ちなみに、健康維持の睡眠とは、それぞれ焼く1時間程度をマイナスした時間であり、それ以下の場合には生命維持の睡眠しかとれていないと考えてよいでしょう。
人間の人生の3分の1は、寝ている時間です。毎日、充分な睡眠が確保できない人や、常に睡眠不足の人は、活力、生命力がない状態といえます。アトピー性皮膚炎患者の限らず、それらの人は顔色や肌色が悪く、皮脂の減少にともない皮膚はザラザラで吹き出ものが多くなります。

さらに、常に倦怠感が強く、免疫力、抵抗力、自然治癒力の低下が認められ、一般的に病弱で、一年に数回も風邪をひくような身体になってしまいます。また、毎日の生活の中では集中力・思考力・決断力・判断力が鈍り常に消極的となり前向きの生活が難しくなります。場合によっては、視神経に異常をきたし視力が著しく低下することもあります。

このような睡眠不足が長く続けば、当然「不定愁訴」「慢性疲労」の症状も強く自律神経失調の症状に陥り、外からの身体にかかる負荷により結果的に取り返しのきかない「突然死」や大病つまり癌や生活習慣病を患うことにもなります。

人間の身体を日常維持していく上では、内分泌・ホルモンが重要な要素を占めています。この内分泌・ホルモンの充分な産生と分泌のためにも充分な睡眠が必要不可欠なのです。

人間は眠る時、脳が休むノン・レム睡眠(深眠)から入り、次いで身体が休むレム睡眠に移る。そして、それらが交互に現れることになります。人間の身体にはもともと体内時計があって、だいたい明け方にはレム睡眠が多くなり自然に目が覚めます。しかしアトピー性皮膚炎患者のような自律神経失調症の人の中には、そのリズムを狂わせている者が多いのです。

例えば、周囲からは眠っているように見えても本人はまったく眠っていないと思っていることがあります。これは、身体は眠っていますが、痒みの症状により脳が覚醒と休息を繰り返している状態であり、レム睡眠が続きノン・レム睡眠に入っていないか短いことを示していると考えられます。

熟睡はあまりみられず、次から次へと夢を見ることが多く睡眠が浅くなります。こうして睡眠のリズムが狂いアトピー性皮膚炎患者は毎日充分な睡眠を(たとえ睡眠にあてる充分な時間を与えても)とることができないのです。自律神経失調による重症不眠者では、起きている時は強い眠気や睡魔が襲ってきても布団に入って横になると、とたんにその状態が冷め、目がらんらんと輝き冴えてきます。

このように長い間睡眠不足の状態で生活すればするほど「慢性不眠症」としてさらに強い症状に陥り回復はますます難しくなってくるのです。
こうした状況に陥ると、鎮静剤、精神安定剤、睡眠剤、睡眠誘導剤などの薬物を使ってこれらの状態をしのぐ人がいるが確かに1日~2日程度の効果はあるかもしれません。だが、常用が続くと身体の異常状態(吐き気・悪寒・手足のしびれ・精神異常・言語のもつれ・胃腸障害)が現れ、病状は増悪しさらに難治化する起因をつくってしまうことになります。

(3)不感温度を守った湯治

先にも述べましたが、昔から日本人には毎日お風呂に入る習慣がありました。若い人の間にはシャワーだけですます人もいますが、普通は、身体を洗って42度~43度の高温で湯船につかり、3~5分間身体を温めて出る、これが単に入浴といわれているものです。

これに対し、「湯治」とは、人間の身体の体温により近い37度~39度の不感温度(熱くもなければぬるくもない温度)で、30分~60分と長い時間しっかりと身体を温め、新陳代謝を盛んにし、多量の汗をかくこと、多量の汗がでるような身体に変わるまで毎日これを繰り返し続けることをいいます。読んで字のごとく「湯」で「治す」、一つの治療法なのです。温泉を使用すれば「温泉湯治」であり、入浴剤などを使った普通のお風呂であれば、ただの湯治となります。これが第三の条件です。

この湯治という治療法は、ありとあらゆる病気を治す基本であり、秘訣なのですがこれを理解する人々は現代では少なくなってしまいました。

慢性、または難治性疾患者が薬物を控え、毎日くる日もくる日も一日3回~4回トータルで3時間~4時間、不感温度で身体を温め多量の汗をかく習慣をつけます。脱水症状にならないように水分・塩分の補給はもちろんバランスのよい食生活を心がけ充分な睡眠をとり続けます。このようにして1年半経過した時点で患者の身体がどのように改善されるかを、血液検査などの医学的見地から臨床データとしてとり続けた医師は世界中に一人もいません。したがって、その効果は誰も知らないし、またその結果に目を見張るものがあっても医師たちは信じようとはせず黙殺するだけです。薬物投与を施す治療法でない限りどのような難病が治ってもまったく興味に値しないものであるらしいのです。

例えば悪性腫瘍の患者については、温泉湯治は「禁忌症」とされています。確かな理由は分かりませんが、おそらく身体を温めることによって代謝が促進され、そうすると癌細胞の増殖が顕著になると判断しているのではないかと思います。もしそうだとすると、それは間違いです。なぜなら、癌細胞は嫌気性バクテリアであり酸素のない場所でも生きていけます。従って酸素のない場所ではその増殖は活発ですが、酸素が豊富な場所ではその増殖は逆に遅いのです。したがって温泉湯治によって熟睡が得られ、さらに身体の血流が盛んになり酸素、免疫物質、栄養物が豊富に身体のすみずみまで届く状態になれば癌細胞より正常細胞の方が強くなり、すべての癌細胞は免疫によって駆逐されます。これが温泉湯治を行なうと癌腫瘍が縮小し消退するという理由つまりその機序です。確かに進行性の癌で末期状態にあり、抵抗力もなく自分の免疫力、自然治癒力そのものが働く状態でないのであれば、温泉湯治を行なう気力や体力もなく、それは逆効果となるでしょう。したがって「禁忌症」とするのは当然です。

しかし、まだ体力も気力も充分にある癌患者にとっては「湯治」によって身体の代謝を促進し、充分な栄養と充分な睡眠をとり、生体防衛機能を高めることが実は癌を克服するためには最高の補助療法なのです。最近では人々の口づたえに、温泉湯治で癌が治ったという話を聞くことも多くなったはずです。

癌に対しての通常療法の主流は、外科治療・化学療法・放射線治療の三つです。皮膚癌、子宮癌など、腫瘍の部位を切除する外科治療の効果は比較的大きいかもしれません。しかし、増殖する癌細胞を殺すという手法である化学療法、放射線療法では、癌細胞に与える損傷より、正常な細胞に与える損傷のほうが大きく、結果的に免疫系に大きなダメージを与え、免疫力、抵抗力、自然治癒力を奪い、逆に死期を早める結果を招いている場合が多いのです。

また癌患者の場合、手術後のリハビリに温泉湯治は最適です。健康な身体になるためには何が大切なのかしっかり学習し、再発に対する心配・不安を取り除きこの時期体力をつけ「湯治」に励むことさえ出来れば、人の身体に備わる「内なる治癒力」が徐々に健康体へと導いてくれます。
癌に限らずどのような疾患でも、それを治す治療は、患者の身体に備わっている「治癒力」を活性化させる手法でなくてはなりません。現代の癌医療が癌を治すために最も大切なことは、術前、術後に関わらずいかにして患者の免疫力を活性化させ、正常細胞の増殖をはかり癌細胞を攻撃し殉滅させるかです。そのためには、術後、体力が備わってくればリハビリとして昔ながらの温泉湯治が最適であり癌を治す補助療法として、すでに注目を浴びてきているのです。

癌をはじめリウマチ、膠原病、高血圧、動脈硬化症、糖尿病、心筋梗塞など、さまざまな病気を患っている病人の身体は、長い間の悪い生活習慣の結果、自律神経失調に陥っており、血液の循環不全(血液の流れがよくない)により新陳代謝が活発に行なわれません。したがって、それらの患者を治すための治療法は、薬を使うといったその機能をさらに低下させることにつながる治療法ではなく(実際に医者が処方する薬の50%はこれら血液の循環不全を正すという目的のものですが、それを使用した場合、血液循環が一時的によくなることはあっても循環不全を引き起こす原因は治療されていないために、いつまでたっても治らないということになります)、生活習慣を改善し、湯治によって毎日しっかりと身体を温め汗をかき、血行を促進させ、血液の循環不全を正し、新陳代謝を活性化させることによって代謝異常を正し血液の清浄化をはかり、歪んだ身体のありとあらゆる機能を正すものでなくてはなりません。

最近の動脈硬化の治療では、血管壁にこびりついたコレステロールなどの固まりを血管よりも小さいカッターを動脈内に入れて削ったり、レザーで溶かす新手法が増えているそうです。しかし新手法により、血管内にこびりついた薬物、老廃物、コレステロールなどは確かに一時的には減るかもしれませんが、動脈硬化の原因は血管にあるのではなく、その人の長い間の食生活等、日常の生活習慣の中にあり、その結果、動脈にそのような異常が発生したのです。

したがって、何も危険を伴うそのような一時的な対症療法を行なわなくても、湯治という、血流をよくし新陳代謝を活発にする治療法を行なえばどうでしょうか。当然、血流がよくなれば、それらのこびりついたコレステロール・老廃物等は、汗や尿、便で排泄されます。常に血流がよい状態であれば、多少コレステロールの摂取が多かろうと血管壁に媚率いくことはありません。このように血流をよくし代謝を促進させることによって清浄な血液にすることは、すべての慢性病にとっての対症療法となり、原因療法ともなるのです。

現に東洋医学では、針・灸・マッサージ・電気治療・カイロプラックティックなど、その治療の主眼とするところは、これら血液の循環不全を正すことです。何れにしても、血液の循環不全を正すという考え方は、病を癒すためには最も大切なことです。そして、それらのすべての治療法を包括したものが湯治療法なのです。このような「湯治」により身体の内分泌系・自律神経系・免疫系の歪んだ機能や低下した機能を正すことが、「癒しの術」であることに気付いてください。そしてそれらをすぐ実行しながら、実体験に基づいた学習を行なってください。10日、15日、30日とたたないうちに、それらの人々が素晴らしい大発見をすることは間違いないのです。
このように、病体を健康体に戻し毎日をベストコンディションで維持していくためのも湯治は必要なものなのです。

したがって、毎日の生活習慣の中に、30分~40分間しっかり身体を温め汗をかく湯治を、いかに日課として取り入れていくかが大切なのです。毎日忙しいからとてもそんな時間はない、というような人では、真の健康を得られないし、また健康維持も難しいといえます。

新陳代謝を活発にする方法として、湯治以外にも簡単に実行できることに「運動」があります。しかし同じ新陳代謝でも運動と湯治では違う結果につながります。

運動は自律神経の中の交感神経を刺激します。そのために汗の出る箇所も、わきの下、額などの局所的な部分に限られやすいのです。また身体に蓄積した薬物などの異物の排泄もさほど多くなく、汗の主成分は水分が中心です。
これに対して湯治の場合には自律神経の副交感神経を刺激することになります。汗の出方も全身的で水分だけでなく、先に述べた老廃物の排泄も活発です。

アトピー性皮膚炎の患者には、交感神経の働きが優位になり過ぎて自律神経を乱している人が多くいます。しかし、これは交感神経の働きが高いわけでなく、ストレス、偏食、睡眠不足などにより副交感神経の働きが低下しているために結果的に交感神経の働きが優位となっているだけなのです。そこで基本的に、副交感神経を優位に働かせることが必要になってきます。また内分泌機能は副交感神経の刺激により活性化する場合が多いのです。そこで、ステロイド皮膚症が併発している場合には内分泌機能を活性化する必要があり、そのためにも余計に副交換神経を優位にさせることが大切です。
また、多くのアトピー性皮膚炎の患者を見て感じることに「アトピー性皮膚炎患者には、得てして呼吸の浅い人が多い」ということがあります。当然、呼吸が浅ければ体内に取り入れられる酸素の量も変わり、強いては新陳代謝にもかかわってきます。そこで腹式呼吸などを取り入れ意識的に呼吸を深くすることも肝要でしょう。

ただし、副交感神経を優位に働かせるためには、あくまでも不感温度による入浴が前提です。高温浴もしくは水風呂などは逆に交感神経を優位にさせてしまいます。したがってアトピー性皮膚炎患者の湯治は、不感温度で行なうことが原則となります。

(4)健康維持のための食生活

四つ目の条件は「食生活」です。「医食同源」という言葉のように「食」は「医」なり、であり、人間の活動にとって一番大切なものは、毎日の食生活だといえます。食生活の仕方、あり方によって健康維持できるか、または病体に陥るかが決まってしまうといっても過言ではありません。

昔の食生活では「自然食」つまり有機栽培された素材が中心に用いられていたため、寄生虫の問題はありましたが、身体に「悪い」ということはありませんでした。しかし現在では身体のために安心して食べることのできるものは何一つないのです。すべてが「危険食品」だらけです。残留農薬からはじまり、食品添加物・防腐剤・増量剤。着色料、脱色剤など、あらゆる化学薬品の使用により、食品本来の味覚は失われ、素材は変質してしまっています。

だからといってあれも危険食品だ、これも危険食品だと食べないでいたら、食べるものがまったくなくなってしまいます。完全に自然食のみの生活に徹することも、この時世では困難なことです。現代は、そのような「危険食品」を食べながらも、生きていかなければならない時代なのです。

また、自然食でなければアトピー性皮膚炎が治らない、というわけでも決してないのです。確かに自然食にしたほうが回復期間は早いようですが、アトピー性皮膚炎を引き起こしている原因が食物の残留農薬や添加物にある患者でもない限り、自然食でなくとも回復は確実に行なわれます。このことは、食べ物の残留農薬や添加物だけでなく殺虫剤やホルムアルデヒド、防カビ剤など、住環境、衣類に含まれる化学物質も同様です。つまり、これらの汚染された現代の環境の中で生活していく際、化学物質に警告信号を現わすための体質(アレルギー体質)があることは、それらの影響を微弱な段階で阻止することには有効でしょう。しかし、その一方で先に述べた通り、さまざまな社会状況からみていくと、逆にごく微量な「危険食品」「化学物質」を上手に解毒処理、消化、排泄する「強靭な身体」を作ることの方が、より大切なのです。

したがって、ここまではアトピー性皮膚炎患者の基本的な食生活についての考え方を説いていくことにしましょう。

アトピー性皮膚炎患者の場合、その幼児期には、免疫のズレた働きにより三大アレルゲンである大豆、卵、牛乳に反応し症状を現すことが多いといわれます。しかし少年期、青年期には、食物に限らずハウスダスト、化学物質など次第にアレルゲンの数も増え、その数は無数ともいえる状態になってしまいます。

特定のそれも数少ないものに対しての食物アレルギー反応であれば、それを食べないことにより、ある程度症状の出現を防ぐことは可能です。ところがアレルゲンが多くなれば、このような対応は不可能です。したがって自然療法における食生活では、重度のアレルギー反応が出ない限り一切食物制限を行なわないことが原則となっています。

食べることで少々の反応があったにせよ、睡眠、湯治などを含む広い意味での「自然療法」を先行させることにより何を食べてもよい身体、どんな食べ物にも反応しない身体に変えることができます。

また実際、医師から制限されたり、除去するようにいわれた食べ物でも、過熱処理したり、少量ずつ慣らしていくことにより、それらが食べられるようになったケースは数多くあります。このような工夫を行なうと同時にズレた働きをしていた免疫機能を正せば、アトピー性皮膚炎は消退し、何でも食べられるような身体になります。これらの基本を、まずしっかりと理解することが必要です。

次に大切なことは、「生命維持」の食事、そして「健康維持」の食事、そして「健康改善」の食事を考えるということです。食事とは、身体の活動のエネルギーを得るために行なうものです。もちろん、生命維持のみを考えるのであれば、食べるという行為より、そのほとんどは充足させることができます。しかし、必要な栄養の補給がバランスよくできていなければ、身体が病体に陥る可能性があります。そこで、次に健康維持の食事を考える必要性が生じます。この「健康維持」の食事とは、アトピー性皮膚炎患者に限らず健康な人でも、栄養のバランスの不足のより病体に陥らないよう気を付けなければならない食事のことです。具体的には、偏食をしない、糖質、脂質、タンパク質のバランスという三大栄養素の基本を考える、そして、それらの基本栄素を上手に生かすためにミネラル、ビタミンの摂取を行なう、ということです。栄養学についての詳しい記述はここでは行ないませんが、私がアトピー性皮膚炎患者二千人に実施した栄養調査では、90%の人が、生命維持は行なえても、健康維持は行なえない食生活をしていました。こういった食生活については、アトピー性皮膚炎患者の家族も同様に行なっていると考えられることから、要するに現在の我々日本人の食生活は、長期的にみて健康維持すらも脅かすような内容のものであるといえます。

さって、実際の食事であるが、和食中心で、主食であるお米をしっかり食べることを心がけたいものです。ご飯とおかずの割合は、平均で七対三くらいが望ましいでしょう。

さらにアトピー性皮膚炎の人が食事で身体を健康体にしていくためには、健康改善のための食事を考えることも大切になります。アトピー性皮膚炎の原因となった身体の異常状態が食以外の部分にある場合には、健康維持の食生活および原因となったその他の生活の改善が先決であり、健康改善の食事はそれほど考えなくてよいでしょう。しかし、その人の身体の異常状態を発生させた原因が食にある場合には、これを必ず行なう必要があります。
具体的には、身体の状況に合わせた栄養の強化です。これは何も健康補助食品などを使え、ということではありません。身体の健康改善に必要な栄養素で、食事でとれないものなどはありません。要は、必要な栄養素を考えた食事が大切、ということです。先にも述べた栄養調査では、野菜の摂取が少なく、結果的にビタミン、ミネラルの摂取が少ないという傾向がみられました。また、動物性タンパク質や菓子類などの摂取が多く、逆にご飯などの糖質の摂取は少なかったのです。

そこで一例ですが、まず野菜類、ご飯をしっかり食べ、動物性タンパク質は魚と肉を二対一でとり、さらに食物アレルギーが心配な場合には加熱処理を行なって食べる、という工夫が考えられます。ただし、個人差が大きいので、詳しくは栄養診断などで自分の食事内容を確認し、自分に合わせた食事を考えていかなければならないでしょう。

このように最低でも健康維持、そして必要に応じて健康改善の食生活を考えることが大切なのです。

他に気を付けたい点は、何を食べてもアレルギー反応が起こらない身体をつくることは必須事項ですが、アトピー性皮膚炎を改善していく過程の中で、食品に含まれる添加物、農薬などの軽減をできるだけ計る工夫を行なうことでしょう。具体的には、無農薬・無添加の食材、食品を利用する、あるいはそれが経済的もしくは入手に困難がある場合には、茹でたり、蒸したり、洗ったりという一手間をかけることで、それらを軽減する方法を取り入れるということです。

いうまでもないことですが、食によって細胞はつくられ、身体は活動エンネルギーを得ています。それらをより良くする、もしくは工夫していくことは、アトピー性皮膚炎を克服していく上だけでなく健康な生活を送るためにも是非考えていただきたい事項なのです。

(5)適時・適切な学習カウンセリング

今まで述べてきたすべての条件に共通していることは、当然ですが、アトピー性皮膚炎の患者である当事者に代ってこれらの項目を実践することは誰にもできない、ということです。あくまで患者自身が、自ら意識して行なわなければならない事柄なのです。

確かに、長年アトピー性皮膚炎を患ってきた「時間」は、その人にとっての「習慣」として根づいている場合が多く、それらを変えることは決して容易ではありません。習慣というものは、それを当たり前に自分が考えているからこそ「習慣」なのです。しかし、生活習慣が身体の機能の異常を少しずつ引き起こし、その結果、身体がアトピー性皮膚炎を必要としたわけです。したがって、その習慣自体を変えなければ、いつまでたってもアトピー性皮膚炎を治すことはできません。

そこで、適時・適切な「学習カウンセリング」が五つ目の条件として必要になります。すなわち、変えねばならない生活習慣や生活環境を患者に気付かせ変えるための実行方法をアドバイスしていくことが重要となってくるのです。

例えば、仕事が忙しく毎日深夜帰宅するようなアトピー性皮膚炎患者がおり、睡眠不足や身体に「悪影響」を及ばしていたとしましょう。このような人は、夜遅くまで仕事をすることを生活のためにしかたがない、避けられない状況として捉えている場合が多いのです。しかし当然のことながらアトピー性皮膚炎難治化の原因がそこにあるわけであり、仕事の内容や睡眠時間といったこれまでの習慣を変えない限りアトピー性皮膚炎がよくなるはずはありません。とりあえず仕事ができればよいということでステロイドに頼り、慢性的に使用した結果が、最後は薬でも抑えきれないほどの重症状を招くのです。結局仕事も続けられず入退院の繰り返しでアトピージプシーの生活に陥ることはいうまでもないことです。

この場合には、第一条件であげた本人の「考え方」が重要な要素となります。アトピー性皮膚炎よりも仕事の方が大事だと思っている間は、忙しい中に身を置くことになり治らなくて当たり前なのです。「仕事よりアトピー性皮膚炎を治すほうが大切だ、また薬物を使用していたのでは痒み・炎症という症状は抑えられていても、アトピー性皮膚炎という病気そのものはいつまでたっても治らないし、それらの薬物による二次的疾患を患う可能性がある。」このようなことに本人自身が気付かねばならないのです。

そしてこの気付きのためにもカウンセリングによる学習が必要となってきます。深い眠りを得るための湯治の方法、また、食事のとり方、運動の仕方など、患者、またその家族にとっては学習しなければならないことばかりです。このことからも個々に対応し得るカウンセリングの重要性がご理解いただけることと思います。

現在、医師により行なわれているアトピー性皮膚炎治療の最大の問題点は、このカウンセリングにあります。

これまでアトピー性皮膚炎の患者が、治すために必要なこれらの知識と情報さらには具体的な方法を通い続ける医者から教えもらったことがあるでしょうか。答えは「否」です。現在の医療保険制度では、カウンセリングはほとんど保険診察の対象にはならず報酬となるレセプト(売上)も計上できません。したがって、一人の患者に一時間も二時間もつきあってカウンセリングをしていたのでは医業としての経営が成り立っていかないのです。そのため、医者はこれらのカウンセリングを熱心に行なうことができません。したがって医業として成り立たせる最もよい安値な方法として薬剤中心の三分間診療のみを施さねばならないのです。

また、これらの生活のアドバイスを含むカウンセリングでは、100人のアトピー性皮膚炎の患者がいれば、それこそ100通りのアドバイスが必要となります。学生、子供、主婦などその人の私的環境、食生活、入浴の方法、趣味、衣食住にかかわる生活環境、そして、何よりも身体に現れている各種の異常状態まで、ありとあらゆる点において、個人差があって当然です。このような「状況」の違う100人に同じ方法をあてはめても、100人とも同じように改善するはずがありません。

医者は、これらの個人に合わせた細かい状況を問診したり、その改善を指導したりはしないし、する時間も持っていません。問診の中では、生活面を少しは聞くこともあるかもしれませんが、あくまでもそれは身体の症状を中心とした質問に限定されることが多いでしょう。また、たとえ生活面を聞いたとしても、それに対するアドバイスはほんのおざなり程度で、最終的には身体に現れている症状に対する薬の投与という、医者にとってはごく当たり前の図式にしかならないのです。

私は、このような点からもあらゆる異常状態の改善に対応するため、その人に合わせた「個別の学習カウンセリング」が最重要だと考えています。
今まであげた四条件もこの五つ目のカウンセリングがあってこそ生きてくるのであって、それらのうちの一つだけ取り上げて行なってもあまり意味はありません。バランスよく四条件を満たすためにもこれらが大切なのです。
このカウンセリングは、その他にも重要な役割を有しています。

というのも、アトピー性皮膚炎に限らず患者は、その病気を克服していく上で自分の身体の症状の変化に一喜一憂します。これは周囲の人々についても同様であり、そのために、その時々の症状がどんな状態なのか、その症状は回復なのか悪化なのかを的確に判断し常に対処できるひとが必要なのです。前章で述べた離脱症状なども、そのよい例でしょう。たとえ最初に充分な理解を持って薬物からの離脱に臨んでも、やはり実際に離脱症状が現れれば不安な状況は患者だけでなく周囲の人々にも起きてきます。その時に不安を取り除くための適時適切なアドバイスがあるとないとでは大違いでしょう。それもそのような強い離脱症状を乗り切りアトピー性皮膚炎を克服した人々の経験談は大いに勇気づけられるであろうし、これ以上のカウンセリングはないでしょう。

このようにカウンセリングは、その時々の患者、家族に対する精神的ケアの意味合いも含まれています。したがってアトピー性皮膚炎を克服するためには。適時・適切でしかも3年~5年と続く総合的な学習カウンセリングシステムが最も重要なのです。

アレルギーは生活習慣病に対する身体の防衛反応

アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患に対して「体質改善」を行なうということがよくいわれているようです。

ここで改善させようという体質は、当然アレルギー体質ということになるのでしょうが、今まで述べてきたようにアレルギー体質は決して悪い体質ではありません。それどころかアレルギー体質者は、ある意味では成人病つまり生活習慣病に対する防衛機構を備えているといっても過言ではありません。
相談に来るアトピー性皮膚炎患者の中には、「こんな身体に生んだ親が悪い」と両親を非難する人がいます。あるいは、「嫁がアレルギー体質だから、孫にアトピー性皮膚炎、喘息が出た」と訴える祖父母もいます。そのような認識不足が「離婚」という悲劇を招いているケースも多いのです。
しかし、そうではありません。アレルギー体質という素晴らしい「贈り物」をくれた両親に対し、感謝こそすれ決して非難などすべきではありません。
もしアレルギー体質がなくアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がみられなければ、日常生活の中で積み重なっていく身体の異常状態を自覚することは困難です。生活習慣病という形で身体に露呈されて、はじめてそれらの「異常状態」が積み重なってきたことに気付くことになります。これは他人事ではなく日本人の死亡原因の80%は、悪性腫瘍(癌)、心疾患(心筋梗塞など)、脳疾患(脳溢血など)の生活習慣病なのです。つまり今私たちが行なっている生活は、「生活習慣病になるための生活」といっても過言ではありません。

これに対してアレルギー体質者の場合は、これらの異常状態すなわち免疫機能をはじめとする自律神経機能、ホルモン産生、分泌機能などの身体のさまざまな「機能」の異常状態の蓄積が少ない段階でアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を身体に現すことができます。さらにアトピー性皮膚炎の場合にはそれらの異常状態はまだ「軽微」であることが多いのです。

だからこそこの段階できちんとした対応を行なえば、将来訪れる可能性のある重大な疾患を防ぐこともできます。

したがって、私は先のことをいう方にはこのように話します。「そう、よかったじゃない。健康な生活を送るために本当の力を、あなたは持っているんだね。アレルギー体質をあなたに与えた両親に感謝しなさい」と。
現在の、アレルギーやアトピー性皮膚炎に対する一般的な認識には、それらを悪者として捉えているものが多いのです。

しかし、絶対的社会環境が劣悪化している現在では、これらのアレルギー体質がない人のほうがむしろ不健康であるということに誰も気付いていません。

アトピー性皮膚炎で悩んでいる方、アレルギーで苦しんでいる方々申し上げましょう。

「皆さんは決してハンデを背負っているのではない。それどころか、アレルギー体質のない人のほうが、ハンデを背負って生きていかなければならない時代なのである。しかし現在、アトピー性皮膚炎、また他のアレルギー症状で困っているのであれば、身体に何らかの異常状態が現れているのは確実であろう。それならば、体質を改善するのではなく、身体の異常状態に陥っている機能を改善していこう」と。これは、何もアトピー性皮膚炎だけに限ったことではありません。慢性疾患といわれる病気、生活習慣病などすべての疾患者に必要なのは、体質改善ではなく機能改善なのです。

これまで、アトピー性皮膚炎とはどのような病気なのか、なぜ発病したのか、なぜ治らなかったのか、なぜステロイドがアトピー性皮膚炎を悪化させるのか、また、どのようにすればアトピー性皮膚炎は治るのか、といったことについて述べてきました。

本書で示してきたアトピー性皮膚炎の捉え方は、現代医療の「常識」とはかけ離れた逆説的なものばかりだったに違いないでしょう。

しかし、これまでみてきた五万人の会員とそれらの症状の改善状態を合わせて数十万の症例が証明するように本書の内容は決して間違いではないのです。これを「間違い」というのであれば、ステロイド剤などの薬物に一切頼らず自然療法のみでアトピー性皮膚炎を克服した人々も皆「間違い」ということになってしまいます。回復した人々は誰もが、自然療法による自然治癒力を生かした治療法の必要性を実感しているし、また、それが正しいことも知っています。そして何より、彼らは本当に治ってしまったのです。

文盲率などからも分かるように、日本人の教育レベルは、間違いなく世界のトップレベルでしょう。しかし、健康に対する教育レベルは決して高いものとはいえません。これは、日本の医師たちのレベルが低いといっているのではなく治療を受ける患者側のレベルが低いということです。

すなわち病気がなぜ身体に発症するのか、その病気を治療させるためには身体に対してどのような条件を満たせばよいのか、また、薬剤の病気に対する役割とはどのようなものなのか。この三つだけでも学習すれば、本来、アトピー性皮膚炎をはじめとする慢性病のほとんどは自らの力で防ぐことができていたはずです。

自分の健康は他人が守ってくれるものでもないし、また病気も他人が治してくれるものでもありません。しかし、自分で守り、自分で治すこと、これは誰にとっても可能なことです。

この「自分を守り、自分で治す」ための学習が現在難治性疾患とされている各種の疾患を防ぎ治すため唯一の方法といえるのです。
難治性疾患とは確かに存在するものです。しかし、それはあくまで現在の医療体制からみた場合であり、その病気の本質的な意味合いから考えれば決して「治らない」ということではありません。世の中に医者が治せない病気が無数にあっても、自分の自然治癒力で治らない病気は皆無であることを知るべきでしょう。つまり難治性疾患であっても難病ではない、ということです。

ある高名な医学博士が、私にこう話したことがあります。
「現在までに分かっている疾患の中で、先天性の遺伝子欠損などによる疾患を除けば、致死率(死にいたる確率)100%の疾患はない。どのような原因、経過かは不明だが、たとえエイズであろうとも癌であろうとも、自然に治ってしまう人は少数でも必ずいる。そこが現在の医学の限界であり、人間の自然治癒力の素晴らしさの証明である。人は誰でも身体の中に、これ以上のものはない『名医』をもっているのである」と。