アトピー性皮膚炎の治し方がわかる本

人間が本来もつ自然治癒力について~薬物からの離脱と温泉療法

アトピー性皮膚炎を完治させるためには、まずもの考え方を正していかなければなりません。これをしっかりと理解することが大切であり、理解できない人々がアトピー性皮膚炎を自ら治そうとしても、それは難しいのです。そのために私は、「治し方」を説いているのです。現に、全国アトピー友の会の会員のように、ものの考え方を正し、そして実行してきた人は、期間差はあっても家族の協力を得ながら完治、根治の状態までしっかりと自らの身体を回復させています。

つまり人間とは本来、薬物に依存せず治癒するために必要な条件さえ与え続ければ、どんな患者でも時間はかかるにしろ、健康体に戻す偉大な力、自然治癒力を持ち合わせているのです。

「病んだ身体が健康体に戻る」のも、「健康な身体が病んだ身体に陥る」のも毎日の生活習慣の善し悪しと、それらの積み重ねの結果なのです。癌を筆頭に生活習慣病といわれる疾患、例えば高血圧、動脈硬化症、糖尿病、心筋梗塞も他の慢性疾患も、長い間のその人の悪い生活習慣の中でつくられた病気であり、これらは生活習慣病です。成人になったから突然発病する病気でもないし「成人病」と呼ばれるのがそもそもおかしかったのです。

このように人の身体は、生活習慣の善し悪しにより、日々、免疫力・抵抗力に強弱の差を生じさせます。アレルギー疾患に限らず病気というものは、その人の日常生活により精神的、身体的に許容量を超えるほどの「負荷」(ストレス・慢性疲労・不眠など)を継続して受け、身体がそれらの負荷を処理、消化できず、免疫力・抵抗力を低下させた時に現れます。すなわち免疫力・抵抗力が、ある一定のラインより低くなると発病し、また一定ラインより上昇すると消退するのです。

したがって、規則正しい生活で自分の身体の「株価」を毎日安定させていくのか、不規則な生活で、低迷また暴落(病体に陥る)させ、果ては倒産(死)に陥るか、それはその人の毎日の生活習慣の中にあるといって間違いありません。

健康な人が、日常生活の悪習慣を原因として病体に陥るまでの期間は、軽度な病気でも、1年半から2年半であると考えられています。また「癌」細胞が発生して小豆大の大きさになるまでは、15~20年かかっているとも言われます。糖尿病、肝臓病、高血圧にしてもやはり10~15年と長年のその人の悪い食生活を含めた生活習慣によって自らがつくってしまったものです。場合によっては、この間に取り返しのきかない合併症等で障害者となったり、また最悪の場合命取りになることもあります。

また、「自然療法」で逆にそれらの病体を健康体に戻すためには、重度の慢性疾患、難治性疾患の場合、やはり1年半から2年半ないし3年が必要でしょう。それも、完全な「薬物離脱」が条件の上です。それでも人間や生き物は、すべて自分で自分の身体を自然に「癒す術」つまり「自然治癒力」を持っています。ものの考え方を正すということは、これらのことにいかに気付くかということなのです。しかし、そこに気付かない人々は多く、医師も理解しょうと努めないまた理解していても患者への指導を積極的に行なうことはないのが現状なのです。

何故なら、どのような疾患でも日常の生活を改善することによって健康体に戻るということは、誰もが信じられないことだからです。アトピー性皮膚炎患者は薬物ステロイドを断っても、そのままでは身体のズレた免疫機能が続き、食べ物やハウスダストなど身のまわりで反応するアレルゲンは増加し、結果的に痒みや炎症はおさまることはありません。副腎機能が低下した上に、外からのステロイドホルモンも欠乏状態で、症状の増悪は依然として進行します。

このような身体の異常状態を改善させる「手法」、それは医者を含めて世界中の誰もが行なってこなかった方法です。しかしそれは何度も述べるように特別な手法でなく、昔からあったごく当たり前の「手法」なのです。

第一に、ダニやほこりだらけの家に住んでいようが、犬・猫がいようが何を食べようが、それらに対してズレた免疫反応を「起さない身体」にする、すなわち身体の異常状態を正し、正常な免疫機能が作用する身体に戻す。第二に、低下した副腎機能を回復させ正常な状態に戻す。この二つを実現できれば、アトピー性皮膚炎の症状は、間違いなく消退します。薬物常用を控えて、自然にそのような身体にする「手法」なにです。そして、これは決して難しいことはありません。

前にも述べましたが、私は1986年以来アレルギー疾患には、身体の機能の異常状態つまり「自立神経失調」が関与していると訴え続けています。したがって、患者の身体から自律神経失調の症状を取りさえすれば、「警告信号」必要なくなり、免疫機能の低下が正され、抗原抗体反応のズレた働きや過剰な働きがなくなり正常な免疫システムの作用する身体に必ず戻るのです。何度もいいますが、その病気を治すための「原因療法」を行なうことが基本だと考えています。

「副腎」は、ふたつの腎臓の上に各々ある5g~7g程度の小臓器です。そしてそれは細胞の代謝を促進したり、血管内の炎症を止めたり、糖類や塩類の代謝に関係しています、1日20mg程度の3種類の副腎皮質ホルモンを産生・分泌しています。

この副腎機能低下を回復させれば、ステロイド皮膚症、そしてアトピー性皮膚炎の症状は消退してしまうのです。「そうなのか。よし分かった。ならば低下した副腎機能を回復させるために何かよい薬はないか」などという馬鹿なことは考えないでください。現在はそのような薬もないし、もし仮にあったとしても使用を止めれば、ネガティブフィードバックが起こることは間違いありません。当然だが薬物に依存せずに、その副腎機能を回復させる「手法」を使うことが大切であり、また副腎以外の異常をきたしている部分の機能を正すことも重要なのです。

そこで私は、強引にこれらの機能を回復させるために徹底した「湯治」を勧めているのです。どのような湯治を行なうのかは後章で詳しく述べますが、毎日お風呂に入って身体を温め、代謝の促進できる身体に変え、多量に汗をかく。くる日もくる日も身体を温め汗をかく、しっかりと栄養をとり、たっぷりと睡眠をとる。当然、感染症(黄色ブドウ球菌・白癬菌・ヘルペスウィルス、重症者の場合にはカポジ水痘様発疹症・MRSA)には何度もかかりますが、これらは基本的によほどの重症者を除いては薬物を使用しなくても、PH値や含有成分の異なる温泉水の塗布でクリアできることがあります。

こうして毎日最低2~3時間、人によっては4時間という湯治を徹底して行ないます。幼児の場合、湯治時間は成人と同じようにはいきませんが、それでも1日トータルで1時間から2時間近くは行ないます。湯治に関するカウンセリングはすべて、友の会が提携するクリニックの医師の指導に基づいて行なわれます。ある一定の状態まで機能の改善が進むと、つまり全体の50%程までに回復が進んでくると、ある日突然に痒みや炎症が消退し始めます。

すなわち免疫機能の低下が正され始める頃には、そのズレた働きにも改善が始まります。代謝の促進により、当然副腎機能の回復も始まり、自分の身体に必要な副腎皮質ホルモンの産生・分泌が徐々に行なわれ始めます。このような時期にいたるまでの間を、私は「離脱症状」と定義付けています。

離脱症状の間は、副腎機能の低下からつらい炎症や痒みの症状が続き、人によってはありとあらゆるアレルゲンに反応したりします。また、離脱を促進させても、湿潤した患部などにあらゆる雑菌が侵入して感染症を起し、症状が増悪と軽快を繰り返すばかりで一向に回復しません。このように、3年~5年を経過しても完治や根治にいたらないのは、身体の機能をもとに戻したり、感染症をクリアするといった、その後の回復のさせ方が分からないためです。

アトピー性皮膚炎を治すための湯治方法には、温泉湯治場で行なう方法や自宅のお風呂で行なう方法があります。前者の温泉湯治場など不特定多数が入る大浴場では、洗い場で逆に感染症にかかるケースがあり、問題が多いものです。

現に関西地方の有名なA温泉病院では、アトピー性皮膚炎の温泉湯治療法を1年間ほど行なっていましたが、重度の感染症、カポジ水痘様発疹症に多数の患者が感染し、怖くなってその治療を止めてしまいました。確かに、これらの「感染症」の対処の仕方が一番難しいのです。ひとつ間違ってしまうと大変なことになってしまいます。したがって温泉湯治の場合、個人浴槽ならともかく、不特定の人々が入る大浴場になると感染症は避けられません。

そのためには専門の温泉湯治施設が必要になってきます。福岡県の原鶴温泉のある日本オムバスの「九州ホスメックリカバリーセンター」では、すべて個人浴室・個人専用ブースであり、入浴の度に温泉を交換する徹底した感染症防止対策が整った宿泊湯治専用の本格的施設です。したがって、管轄する保健所より「患者入浴許可書」の交付を受けています。

宿泊は、2ヶ月~3ヶ月~4ヶ月長期滞在の方が、ほとんどです。また、家庭においては「自宅湯治」に専念させることにしています。自宅の風呂に宅配された温泉を入れ湯治を行なう方法ですが、自宅のお風呂の場合は家族だけの入浴ですから、その点は安心です。また、これらの方法であれば病状によっては、学校に通いながら、仕事しながら、家事を行ないながらといった、「ながら」湯治が可能であり、家族と一緒に住みながら湯治できるため精神的にも落ち着けます。

このような「自然療法」「温泉湯治療法」が良いと分かっても、これを実践するのは大変難しいことでもあります。アトピー性皮膚炎は毎日の生活の中でつくられるものでもあるため、入浴で身体を改善しようと思っても悪い生活の繰り返しで身体に負担をためているようでは、所詮「いたちごっこ」にすぎません。また、間違いなく回復に向かっているのか、感染症で逆に悪化しているのか、その判断も困難です。

したがって、適時適切な医師の診療またカウンセラーの生活指導がない限り、ある程度までの改善は得られても、完治、根治に至るのは難しくなります。そのために私は勉強会を行なっており、実際「全国アトピー友の会」のアトピー性皮膚炎克服者の実体験による経験談を含めた学習会には全国から多くの人々が参加し効果をあげています。