アトピー性皮膚炎の治し方がわかる本

自然療法とカウンセリングシステム~自宅温泉湯治

では、薬物に依存せず病体を健康体に戻す自然療法とはどのように行なうのでしょうか。各地の温泉場で行なう方法もありますが、オムバスの自然療法の手法を参考に説いていきます。滞在型温泉湯治施設「九州ホスメックリカバリーセンター」の利用と自宅における温泉湯治療法とあるが、ここでは自宅温泉湯治について述べましょう。

具体的には、温泉水を湧出地で20リットルのビニール容器に詰めて段ボール梱包し、それを宅配便で自宅に届けます。その中には、湧出した温泉そのものを詰めるだけであり他の何かを混入するといったことは一切しません。そしてこの届けられた温泉を自宅のお風呂の浴槽に入れて沸かし入浴を行なうというものなのです。

またこれを、より温泉場の環境に近づけて行なう方法もあります。最近ではよくみられるようになってきたがいわゆる循環濾過温浴器(レジオネラ菌等の対策済みのもの)を使う方法です。これを使えば、お風呂の湯が循環濾過され入浴のたびにお湯を交換することなく、一定期間(2日から3日で交換)の入浴が可能となります。

さらに一定の温度で常に保温しているため24時間いつでも好きな時に入浴できるというメリットがあります。これを利用し宅配された温泉を入れることにより、温泉場と同様の環境つまりいつでも好きな時に温泉に入れるという環境を自宅につくるのです。

さらにその人の症状、体調、生活環境に合わせて、温泉の濃度や泉質、また入浴時間や入浴温度、入浴方法を適宜変化させます。これらのアドバイスについては、温泉療法医師の指導の下、生活指導担当カウンセラーが実施していきます。

また循環器を使用せず普通の水道水を沸かしたお風呂に、温泉そのものを20~30リットル程混ぜたり、入浴剤を使用したりすることもあります。ここで一番会員が頼れるのは、アトピー性皮膚炎を完治させた人々の生の声、つまり「応援」でしょう。彼らは、友の会の雑誌「湯治の声」に克服卒業者として、また私の「書籍」に登場後つらい状態にある人々の応援にかけつけ実体験に基づき経験談を語ります。会員の精神的な支えをしてくれるからです。いずれにしても湯治を行なう人は、生活環境や入浴状況そしてアトピー性皮膚炎の回復状態に合わせて顧問の医師や生活指導担当のアドバイスを受けていきます。

ただし、やみくもに温泉に入浴すればよいというものではありません。温泉湯治とは、あくまでも身体の機能を回復させていくための「補助的手段」であり脇役なのです。主役は、その人の身体機能に異常をもたらした生活環境、生活習慣の改善にあるわけですから、そうした改善の必要性を「自覚」しながら「温泉湯治」を実行することが大切なのです。

また皮膚の状況、身体の状況については、自然療法に理解のあるクリニックや病院において適宜診察を受け、場合によっては一時的に薬物を使用することもあります。また血液検査など西洋医学的見地からも生活を管理し、現在の自分の状況をしっかりと把握してもらいます。

温泉湯治療法は、自ら持つ自然治癒力を活性化させ、アトピー性皮膚炎を自然消退させようというものですから一朝一夕、そう簡単に結果を出せるものではありません。そこで、毎日の生活状況やアトピー性皮膚炎の状態を客観的に判断するために、自らの日常生活行動を記録管理しまた症状の経過写真撮影を随時自宅で行い、患者自身および家族に回復の過程を確認してもらうようにしています。

また、実際の生活環境の改善については、家庭内の化学物質の除去、電磁波問題などをトータル的にアドバイスし、食生活の指導も行ないます。さらに、アトピー性皮膚炎を克服していく過程の中で生じる家族を含めた精神的不安やストレス、そしてトラブル等私自身がその中に入って解決することも多くあります。さらに、自然療法でアトピー性皮膚炎を克服した人々、またその家族が参加して的確にアドバイスすることもあります。

また全国アトピー友の会の協力によるオープンカウンセリング(集合学集会)やグループ学習会として常時行なわれ、私自身も参加する機会が多くあります。また私の講演会、学集会、セミナーも随時、全国各地で行なっています。これらの一連の学習システムが「自然療法」であり、その「ノウハウ」は、ありとあらゆる手法を用いた「総合学習カウンセリング」しかも3年~5年と続く徹底したカウンセリングにあります。

自然療法ではアレルゲンを除去したり、皮膚の痒みを一時的に抑える方法をとりません。痒みは、アトピー性皮膚炎をもたらした何らかの原因の結果生じた「症状」であり症状にいくら対処しても根本的な解決にはいたらないからです。また食事療法についても、アレルゲンとなる食物をとらなければ確かに痒みや炎症を軽減できる場合もあるでしょうが、痒みが出ないということとアトピー性皮膚炎が治るということはまったく別の問題で、何かの機会にアレルゲンに接すれば、その都度また痒みや炎症が出ることになるのです。

要は、何を食べても、どのようなところに住んでも、痒み・炎症が出ない身体にすることであり何より身体の異常状態を改善してしまうことが最も大切となってきます。

そのため、アトピー性皮膚炎の原因となる可能性を含む問題はすべて解消させていきます。化学物質や電磁波などの生活環境もそうですし、慢性的睡眠不足や不規則な食生活習慣、また疲労の蓄積による慢性疲労、運動不足、ストレスをためやすいという悪い生活習慣などは、カウンセリングによって徹底的に解消させていきます。

ただしこれらの解消も疾患者が受動的に行なうものであっては意味がありません。それでは継続も難しいし必要な量をしっかりとこなすことも困難になります。また。疾患者を支えているのは本来、同居する家族や周囲の人です。したがって、その家族の理解も不可欠なのです。そこで、これらの学習カウンセリングを受けて「自然療法」を行なうにあたっては考え方や環境が整っているかどうかを当初から見極めることが大切になってくるのです。

アトピー性皮膚炎は、確かに「難病」ではありません。治していくための「方法」も実際はとても単純なものです。しかしその単純な治療法の裏には、このように本人、家族、友人、克服者やその家族、生活指導担当そして医師の指導さらには私の学習会と、完治までにはさまざまな人々の徹底したタイムリーな指導そして支えを受けながら苦しい日々を乗り越えて行くのです。

そこには、現代医学界がこのような自然療法を、インチキ・悪質・悪徳とバッシングを行なうことの愚かさがみえます。2年~3年~5年という長い期間、患者の想像を絶する「命がけ」の苦闘を支え、さらに共に泣き、共に苦しみ、そして共に悩みつづけ、患者と命運をともにし、命がけの指導を続ける人々の心が分からないからです。つまり民間療法では、たった一件のトラブルにおける裁判沙汰であっても、また当然死につながるようなひとつの事件があってもその治療法またその企業の存在は終わりなのです。

人間の病んだ身体とは、俗にいう「血のめぐりの悪い状態」つまり血液の環境不全の状態です。したがって病体を健康体に戻す基本は、血のめぐりをよくすることにあります。これは、急性疾患はともかく慢性疾患や難治性疾患者の苦痛を取り除くための「対症療法」として、さらには、もとから治す「原因療法」としても最良の方法です。

ありとあらゆる慢性疾患に病み続ける人々に申し上げたいのです。なかなか思うように回復が得られないのなら、一時的に常用する薬物を加減しまたは完全に止めて現在の生活習慣を少しばかり変えてみてはどうでしょうか。つまり、湯治という昔からある人間の知恵を生活の中に取り入れるのです。そうすることにより、その後の人生を変えてしまう素晴らしい大発見をすることになります。

ありとあらゆる病気の起因となる身体の「冷え」そしてその「冷え」から生じる血液の循環不全を正すことが、いかに大切であるかを分かってほしいのです。病気を治すのに難しいことを考える必要はありません。単にお風呂に入り、しっかりと身体をお温め汗をかき、代謝を促進させ、上半身と下半身の温度差である身体の冷え、手足の冷えをとり、常にポカポカと温かい身体をつくればよいのです。毎日のこれらの単純な作業の繰り返しが、すべての病を癒す人間本来の「知恵」だったのです。今こそ、人々はこのことに、早く気付くべきなのです。

このように、アトピー性皮膚炎に限らずどのような疾患でも基本的に湯治の要領は同じです。

湯治の基本は、「頭寒足熱」です。つまり、頭をすずしくして身体をリラックスさせ、下半身をしっかり温めることです。初めに身体が温まる間は首までつかり、徐々に胸から下半身浴へと移行し、これを交互に繰り返し時間をかけて行ないます。身体の代謝を促進させ、代謝異常を正すためには、このような頭寒足熱による湯治が最も効果的です。