小川秀夫の湯治の目安

湯治の注意事項

湯治を始める前に

湯治を実行するにあたり必ず主治医の理解、協力を得ること。なかには抗がん剤の副作用が耐えられず、また宗教上の理由などで医師の治療を拒否し医師の理解を得ぬうちに摩周苑に駆け込む方もいるが私はお勧めしてはいない。最初は自宅のお風呂で2、3週間ほど無理をせず体を湯治に慣らし、そのの経過、結果を主治医と相談し協力を得てから本格的に湯治に取り組むのがよいでしょう。

湯治の学習をする

湯治は自分自身で自分の病気を治す療法なので学習、理解が必要です。あわせて「体を温めればガンは消える」をお読みください。またアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、リウマチ、膠原病など)のかたは「アトピー性皮膚炎の治し方がわかる本」、「アトピー性皮膚炎自然療法」をお読みください。

血液検査、腫瘍マーカーの検査は定期的に

現代の湯治には医師との理解、協力が必要である。血液検査、腫瘍マーカーの検査が不可欠であるからである。近年、現代医学の発展した検査技術は称賛に値する素晴らしい技術である。
血液検査、腫瘍マーカーの検査の注意事項として一般的な風邪などで市販薬を使用した場合に一時的に検査値が悪くなる場合がある。市販薬でも免疫力に影響が出るのである。軽い風邪の症状は薬に頼らず湯治を長めにして治すよう心掛けたほうが良い。

家族の理解は絶対条件

家族の不仲は病気に影響を及ぼすストレスになりやすく、これは現代医学でも確認されつつある。湯治を始めるにあたって家族の理解を得ていないと、些細な好不調の変化で「ほらみろ悪化した」、「だから病院で診てもらえ」と口をはさんでくることになる。それでは何かと気をもみ、精神面に及ぼすストレスで悪化することはあっても良化するのは難しい。

浴室と脱衣所の温度差にご注意

寒い時期になると、「ヒートショック」という現象が起こることがある。人間は間脳の視床下部にある体温調節中枢が司令を出し、身体の温度調節をしている。急激な温度の変化で激しく血管の収縮を繰り返すと血管に衝撃を与え過ぎるともろくなっていく。その結果、血圧、心拍数にも異常をきたし、とくに血管に障害が出た場合、最悪、脳出血・脳梗塞など脳卒中、心筋梗塞に陥る。浴室や脱衣所は、衣服を脱ぐ場所なので寒暖の差を直接肌が感じやすく、でできる限り温度差を少なくするよう注意が必要になる。

42度~43度の一般的な入浴について

通常の入浴では体を洗い42度~43度高温で2分~3分湯船につかり体を温め汗が出始めたらあがる。これらに要する入浴時間は平均22分間であり、これが単に入浴といわれるものである。温泉旅行に行ってもこのような入り方が普通である。しかし湯上がり後の3分~5分は確かに体も温かくそれなりに汗も出るが、そのような入浴では、皮膚の表面下1センチほどしか温められていない状態である。したがって湯治治療としてはその効果は乏しい。

高温浴では体はすぐに温まるが湯上がり後冷めやすいという状態である。さらに高温浴では心肺機能に負担がかかり体の防衛反応も強く、逆に緊張状態が現われ温熱効果が乏しい、さらに急激に血圧が上昇することからも危険である。

これらは高温サウナにも同じことが言える。短時間に内に体の皮下1センチほどが温まり、汗もそれなりに出るが、防衛反応によってからだの芯までは、なかなか温まらず、逆に体の芯まで温めようと入っていれば、高体温による貧血症状で倒れて、意識がなくなってしまう危険がある。

飲酒をしての湯治は絶対禁止

酒を飲んで泥酔状態で高温の湯に入り心臓や肺、脳に急激な負担がかかり、溺没死する人が増え、入浴中の死亡者数は毎年2万人を超えている。決して泥酔状態で高温浴をしてはならない、とくに高血圧の人は気をつけること。

長期にわたる温泉湯治では大勢が集まる湯治場は避ける

長期にわたる温泉湯治で人気のある温泉宿に宿泊すると大勢の湯治者が集まるので自然にグループができる。和気あいあいとみんなで仲良く病状が改善していけばいいのだが、なかなかそうはいかない。病状の改善が他の人と比べて遅くなる人は焦りやストレスを感じることになる。またそこでの人間関係も何かと負担になる。いくら湯が良くても、病状の回復に良い環境とは言えないのである。さらに湯の質も大切であるが適切な温度に調整できるかが重要である。不特定多数の入る湯では自分に合う湯温の調整は難しい。長期にわたる温泉湯治で湯治場、宿を選ぶときはできるだけ人のいない寒村地で湯温も適切な穴場を見つける必要がある。

末期症状の高齢患者の場合

末期症状の患者、高齢者の患者で抗がん剤や鎮痛剤等を服用しながら病状がそれなりに安定している人も多い。それらの人は現在の生活、QOL、クオリティオブライフ(生活の質)が満たされているのであれば無理に湯治を勧めない。
若い人と違って細胞分裂は激しくなく「がん」の進行は緩やかであり、「がん」と共生し易い、したがって安定した状態で生活を優先させるのも良いことだと思う。体に負担をかける湯治は控え、入浴時間を少し長くする程度で温浴を楽しみ経過を見守るのが良い。

小川秀夫の湯治の相談・カウンセリング