アトピー性皮膚炎自然療法

現代アトピー性皮膚炎治療の実態

子供の代表的な病気であり単なる痒みの症状であったアトピー性皮膚炎、それがいつの間にか難治性の疾患と呼ばれるようになって久しい。

以前は成人になるにつれて自然に治っていたが、最近では治りにくい病気だから気長に付きあっていくしかないと言われている。そして現在では成人型アトピー性皮膚炎として、そのアトピー性皮膚炎という病気を引きずって、治ることもなく成人へと成長している。自然に治るはずのものが、何が原因で難治性へと変わってしまったのだろうか、また成人になると治るはずだったものが、何が原因で激増しているのだろうか。

現代の医療では相変わらずアトピー性皮膚炎の発症原因は不明であり、したがって有効な治療法は確立されていないという。

他にも難病といわれる原因不明・有効な治療法がない疾患が時代と共に確実に増加してきている。癌やエイズもいまだ有効な治療法もなく難病・死病として認識されている。

しかしこれだけ医学が進歩しているにも拘わらず、ひとつの疾患が世に現われ、その後40年~50年経過した今日、いまだに発症原因不明・治療法不明というのはおかしい事であり、ありえないと事である。このままでは現代病として現れる疾患はすべて原因不明、根治的治療法不明の難病ばかりになってしまう。

実は発症原因を突きとめるのは難しい事ではない。また有効な治療法の確立も決して困難なことではない。現代医療の医師はそれらを良く理解しているのである。

しかしどんなに優秀な医師であっても薬物使用の対症療法という枠の中でしか彼らは存在価値がないし残念ながら医師としては生きられないのが今日の医療実情である。なぜなら患者の身体を良く考え、極力薬物を控えめに処方し、カウンセリングを施し、治癒を促進させるための治療を行う医師は、どんなに良い実績があっても、またどんなに患者に人気があっても、病院にとっては決してありがたくないのである。いずれ折をみてリストラの対象になってしまう。

つまり現代の医療が薬物依存の対症療法を控え、原因療法の重要性に目を向け、これらを少しでも現在の医療に取り入れようという気になれば、全ての慢性疾患・難治性疾患治療は簡単に確立できるし、またそれらの治療に成功する。しかしそのためには抜本的な医療制度の改革が必要になってくるからそこが難しい。

このような薬物のサジ可減治療法は、もはや現代の医療を担う医師のやる仕事ではない。薬物のみに頼った医療から人間本来の内なる治癒力を助長する医療に少しだけでも目を向けるべきである。

なぜなら、薬物はその作用として、症状を一時的に抑え込み症状を緩和することで表面的に治ったように見せかけることである。しかしサジ加減をひとつ誤ると、人が死ぬほどであるから薬の強弱はあるにしても身体が受けるダメージ(免疫力・抵抗力の低下)は間違いなく体内で起こっている。

それら薬物の常用が続き許容量を超える状態になると、副作用として新たな医原性、難治性疾患が突然現れてくるからである。

薬物で人間の身体をコントロールし、病気の真の原因を追究しない「対症療法」だけの現代の医療に対してこのような不安を感じるのは私だけであろうか。
このままでは医師がその病気を治すために施した、薬物治療の副作用により新しく作り出された、まさしく奇妙な医原性の疾患ばかりが次から次へと発生して、医師の言う原因不明、治療法不明の疾患が増え続けることになってしまう。

なぜ病気が発症したのか、過去の生活を顧みることがまず治療の出発点であり、悪い生活習慣を変えず安易に薬物を使用し、治ったつもりになっていたのでは、いつまで経っても、またどんなに世の中が進歩しても、人間は永久に「病から開放」を得ることはできない。

確かに生命に危険が生じている、ある疾患に対し薬を使えば生命が助かり、使わなければ死ぬことが分かっている場合であれば、その薬を使うことは当然のことである。病を治すことはできなくても、緊急時に一時的に生命維持する力が薬にはあるからだ。

また一時的に苦痛を和らげるためにケースバイ・ケースで使用することがあっても、それはそれで使い方としては効果がある。

しかしほとんどの慢性疾患については「絶対に薬が必要」という状況下には陥ってはいない、そして多くの患者が、「絶対に必要」ではなかった薬の漠然とした使用により、その副作用に苦しむことになるのである。

ある研究機関の調査によると、現在病院に入院している慢性疾患の患者の4分の1、つまりその25%の人々は元の病気を治療するため使用してきた薬の副作用による医原性の疾患や異常状態を治療しているということである。

そして副作用によって現われた疾患を治療するために用いた新しい「薬物」によって二次、三次性の疾患が発生し、さらに四次性疾患へと雪だるま式に医原性の疾患が増え続け、それらの治療に追われているのが現代の医療現場の実情である。

この「副作用を治療する」ために使われる医療費つまり「薬物療法」によって悪化した患者の治療代金はこれも薬代金であるが、当然のことながらすべて国民の医療保険で賄われている、国家予算の4割に近い膨大な医療費、そして毎年1兆円ずつ増え続けるこれらの医療費によって健保財政は破綻に瀕している。

人間はそう簡単に「慢性疾患・難治性疾患」にはならない、毎日繰り返される悪い生活習慣が身体のある部分に機能の低下を起こし、それが次第に「病状」となって現れ出した時点、つまり初期症状の段階で的確な対処(規則正しい生活習慣)を行なわず、やみくもに薬物を投与した結果によって身体機能の低下がもたらされ、二次三次の疾患が起こり、さらに合併症が出現する。このようにして、慢性化・難治化が進んでいるだけである。

つまり難病とは、急性的な病原微生物を原因とする感染症などよりも、毎日の生活の積み重ね、あるいは過剰な薬物治療により生じる「人為的」要素の強いものである場合が多い。

私は温泉湯治、自然療法の効果を20年間人々に説いてきたが、中でも自宅湯治では、患者はカウンセリングを受けながら家族全員が入る風呂で湯治をする。

したがって家族に他の疾患者が居れば一緒にカウンセリングを受けながら湯治が出来る。そのために回復経過については、アトピー性皮膚炎だけではなく家族が抱えるあらゆる疾患についてそのデータを得ることが出来る。

湯治とは、呼んで字のごとく「湯」で「治す」つまり「治療」である。日本人は昔から風呂に毎日入る習慣がついている、場合によってはシャワーのみで済ます人もいるが身体を洗って湯船につかり多少温めて上がるという程度が、普通の人にとっての入浴である、これらに要する時間は平均22分間という。

これに対し、毎日の生活の中で1日3~4回、病気を治すために30分から60分、不感温度(37度~39度)でしっかり身体を温め多量の汗をかくこと、また多量の汗が出るような身体に変わるまで毎日入浴を繰り返し続けること、この行為が湯治でありひとつの治療である。

そして、このような「手法」にしたがって1年半から2年半と療養を続けることによりアトピー性皮膚炎だけでなく癌をはじめリウマチ、膠原病など「難病」といわれる、多く病気の改善するようすを観察してきた。

慢性疾患の患者がこのような手法で、薬物治療のみに頼らず、朝、昼、夕方、就寝前と40分~50分の湯治を毎日3~4回しっかりと行い食生活に心がけ充分な睡眠をとるような生活を行なっていった場合、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月と経過するにつれて、その患者にどのような病状の改善が現れるのか、現代医学では全く分かっていない。そのようなデータをとった臨床例は世界中にないからである。

人の病んだ身体を癒すのに、もともと薬物は必要ない。薬物は生きた人間にとっては毒物であり、常用すると逆に自然に治ろうとする「治癒系」を阻害することにつながる。人間の身体には治癒系つまりヒーリングシステムというものがあり、病気になったり傷を負ったりすると健康な身体に戻すための仕事を始める。

これらのヒーリングシステムを手助けする手法が本来の医療であり、その医療のあり方は薬物依存ではなく「自然治癒依存」でなければならない。

基本的に慢性疾患と呼ばれる「病気」は、患者本人が日常生活の中でつくり出したものである。したがって漫然とした薬物投与を控え、日常の生活改善を行なっていけば患者自身の身体がいずれそれを自然に「治癒」するものなのである。

アトピー性皮膚炎も同じ心身機能低下によって一時的に現れた症状にすぎないのであるから患者自らが毎日の生活の中で改善を行いホメオスターシス(自己を一定の状態で常に健康に保つ恒常性)を高め、免疫力・抵抗力をつけることにより症状は改善し、いずれ自然消退する。

私は薬物の使用を控える大勢のアトピー性皮膚炎患者の「生活改善」を指導し、20年間に数万人のアトピー性皮膚炎患者の回復を見届けてきた。それまでの血液検査、回復経過写真、毎日の生活改善記録、自律神経失調の改善状況などについて記録保管されている。

1992年に発行した月刊アトピーマガジン「湯治の声」「あとぴナビ」は2006年8月号で延べ164号になるが、それらを見れば「アトピー性皮膚炎がなぜ発病したのか」「なぜ治らなかったのか」「なぜ治ったのか」が誰でも理解できるであろう。

従来の医学の考え方ではアトピー性皮膚炎の定義は、いまだ明確になっていない。

皮膚科学会においてアトピー性皮膚炎の定義が発表されてはいるものの実際の治療現場において、その定義にしたがって診断されていることはまず少ないようだ。

実際の診断においては、例えば乳児・幼児が皮膚に炎症を起こし痒みのある状態で治療に行けば九分九厘、医師からはアトピー性皮膚炎と診断される。保健所などの定期健診でも、先にあげた診断を行なわずに「アトピー性皮膚炎ですね」と言われた母親は数多い。
        
当然のことながら医師にそのように宣告された親はすっかり落ち込んでしまう。「子供の病気だから大人になれば自然に治る」と言われていた昔と違い最近では周りにも重症化した難病アトピー性皮膚炎の子供たちが大勢いる、我が子も難病アトピー性皮膚炎でもう治らないのかという悩みは深刻になってくる。

医師によっては「お宅のお子さんの将来は暗いですね」「一生治りませんよ」と平然と言う場合もあり、打ちひしがれることになる。

そのような状況で医師から「私の指導管理のもとに上手に使えば副作用など出ませんよ」と言われればステロイドが怖いということは聞いていても自分の子供だけは大丈夫だ、と半信半疑ながらも無理矢理自分を信じ込ませて使い続けてしまう。そして気が付けば、いつの間にかすっかり「ステロイド依存症」「ステロイド粉飾人間」になってしまう。

現在全国アトピー友の会には5万人の会員がいるが、その85%は35歳以下であり、これから社会に出る20代の人々の中には治療に施したステロイドの副作用により白内障、網膜剥離という最悪の障害が発症しそれらが手枷足枷となって人生を狂わされているのが実情なのである。