アトピー性皮膚炎自然療法

回復は自然療法を学ぶことから始まる

本章では、「自然療法」「温泉湯治療法」により、アトピー性皮膚炎などの難治性疾患を回復させるためにはどのような手法で行なうのか、またどのようなことが大切かを具体的に説いていこう。

さて、アトピー性皮膚炎などの難治性疾患を自然療法で癒すためには、何が一番大切なのだろうか。

それは自然療法の基本である「薬物に依存しない」であることはいうまでもない、しかし例外的に患者によってケース・バイケースで使用せざるを得ない、また使用した方が良いケースもある。しかしそれらの判断は患者自身が行なうことが前提である。

したがって自然療法により病体を健康体に戻すためには、いかに上手に今まで常用してきた薬物から離脱をはかるかということが重要になってくる。なぜならステロイドを常用しながら湯治を行なっても、まず期待する効果は得られない。そのためにはステロイドを控えることがその基本であることを心得ることである・私はこれらを「正しいものの考え方」と説いている。

自然療法により病体を健康体に戻すための大前提は、まずこれらの「正しいものの考え方」を備えることである。

本書を読んでも、「自然療法」の効果が、そして「自然治癒力」がまったく信じられない、信じることができない、理解できないというような人、また家族の中に頭から否定し理解しょうとしない、さらに批判する人がいる場合、自然療法を行なっても、その期待する効果はまず得られない、そのような人々は「湯治」をしないほうがよい。

なぜなら、患者本人がその気になって一生懸命頑張っていてもすぐ側にいる人が「そんなものでアトピー性皮膚炎が治るなら医者はいらない、きっと騙されているに違いない。

薬をやめたら、治るどころかますます悪くなっているではないか。病気を治すのは『医者』であり、『薬』ではないか、薬を使わないで何で病気が治る! すぐに病院へ行け! 病気は病院で治してもらうものだ」と批判する場合があるからだ。このような人が家族や周囲にいるようであれば、本人の薬物に頼らない自然療法に取り組む意欲は半減し、つらく長い湯治生活を続けることができない。

病気を克服していく上で同居する家族の協力が不可欠であることはいうまでもない。つらい時期に、「大丈夫! きっと治る! だから晩張ろう」と励ます場合と、非難したり、口論の多い生活では本人の精神状態がまったく違ってくるのは自明の理であろう。

幼児・小児の場合でも毎日両親また家族間で大喧嘩ばかりしていたのでは、治るものも治らなくなってしまう。それらの精神的なものが、患者の病気の回復つまりその疾患者の身体の治癒系に与える「影響」は実に強いものがあり、病状の増悪、軽快に敏感に反応することになるからだ。このようにアトピー性皮膚炎の自宅療法は、自宅のお風呂を使って行なうわけであるから家族の和と愛情、そして協力が大切であり、一つの「家族療法」ともいうことができる。

私は本書で「自然治癒力」という言葉をさかんに使用しているが。実は「医学大辞典」にさえ、いまだにその記述がない「用語」であり、もちろん医大の教育でも病気を癒す自然治癒力を説くカリキュラムは存在しないのが現状である。

この「自然治癒力」「自然良能」「自己治癒力」と呼ばれるものは、まったく目に見えないものである。その見えないもので病気を治すということ自体、何となく「胡散臭い」という考え方が、現代の医療界にも、また一般にも広く存在している。特に現代医療界では基本的に薬物に依存しないで病気を治す手法は、正当な治療法ではなく、あくまでも「胡散臭い」治療法としてとらえている。

したがってどのような「病気」であっても、そのような治療法で「治った」ものは、医学的根拠がない、でたらめな治療法の症例として扱うのである。つまり彼らは「自然治癒」を医大で教わったことがないから分からないのである。また自然治癒力は目に見えないものであるから、信じられないともいう。

しかし本当はありとあらゆる疾患つまり人の「病気」を癒しているのは、この「自らを癒す内なる力」である。ところが現在の世の中の常識は、薬が、医者が、そして病院が「病気を治す」ということになってしまっている。これらの事を患者だけでなく世間の人々も充分理解することが必要である。

それでは、自然療法を実践する患者は絶対に病院に行かないのか、絶対に薬物を使ってはいけないのかと云うとそうではない。要はその人の考え方であるから、どうしても薬物を常用しながらまたは薬物を加減しながら自然療法を行ないたいという人もいるだろう。そういった人々も全国アトピー友の会5万人の中には確かにいる。

彼らは1ヶ月に1回、または2ヶ月に1回、自らのかかりつけの病院・診療所、そして全国アトピー友の会の協力病院に行っている。途中喘息で重責発作を起すことも、また合併症や感染症に罹ることも当然ある。このような事態には、医師の指示に従い適時適切に薬物を使い緊急時をしのいでいる。

最近では、患者が病院に行って自然療法で温泉療法をしていると医師に告げれば、「そうですか、そうならば薬は控えめにしておきましょう」と薬物の処方を控えるような病院に出会うことも数多い。このように自然療法や湯治療法に対する医師の理解は、また最近徐々に広まっているようだ。「全国アトピー友の会の会員は、病院に来てもかたくなに薬物処方を拒否する、困ったものだ」という医師の声も相変わらず耳に入る。

しかしその一方で、会員の中にはいまだに薬の処方を受けている人がいる。だが彼らの中にはその薬を使わずに全部捨てている人も多い。ある患者は、「薬を拒否すると医師がいやな顔をするし、あとが怖いから一応もらってくるが、まったく使用せずにそのまま放ってある」とも言う。

また、湯治開始直後でまだ回復の自覚が得られないつらい時期は、アトピー性皮膚炎患者に限らず、たとえ使用しなくても側に薬があるだけで何か安心感のようなものがあるとも彼らは言う。しかしいずれにしても患者は薬を使用する気はないようだ。

アトピー性皮膚炎患者に限らず処方された薬物を使わずに、いわば捨てているのと同じ状態にある薬物の金額は、毎年膨大なものになるだろう。何よりも自然療法が広まれば広まるほど人々は、薬のみに頼らない、医師のみに頼らない、病院のみに頼らない、そして自らの日常生活を改善し健康な体を取り戻すという健康改革。医療改革につながり、さらに破綻寸前の医療保険制度を救う最良の方法である。

現に全国アトピー友の会やホスメックQOL健康クラブの会員はもちろんのこと、その家族は日課として一日一回30分~40分の「湯治」を取り入れている。日常の生活の中で何が大切かを学び実践し、風邪さえもひかない健康な身体でありベストコンディションで毎日を過ごし、月一回の学集会に家族ともども参加している。それらの人々は病院にかからないことを誇りに、さらに健康を自慢しあうのが楽しみな人達ばかりである。