アトピー性皮膚炎自然療法

離脱症状、克服の極意

アトピー性皮膚炎患者の薬物常用者には、「離脱症状」が必ず現れることになる。ステロイド使用中止による離脱症状は、ステロイドの種類や他の薬物を含めた使用期間、使用量、また、本人の精神的、身体的なファクターなどにより千差万別であるが、症状を促進し、2年~3年~5年と経過すると、それがある一定の状態まで「クリア」になる時期がやってくる。

つまり、それ以上悪くもならなければ良くもならない、季節的なもの、精神的、身体的なものに左右され、痒みや炎症が増悪と軽快を繰り返すような状態である。この時点で、自己回復としては50%程度と考えてよいだろう。

すなわちステロイド皮膚症という薬物の過剰投与による医原性の疾患から離脱し、本来のアトピー性皮膚炎の症状程度にまで回復した状態である。したがってこのままいけば、いずれ確実にその後の改善が顕著に現れる時期が訪れる。

湯治開始後、「回復への自覚」を持てるような時期がくれば、あとはしっかりとそれなりの克服目標を定め、治るための必要条件を毎日の湯治生活に与え続ければよい。

回復へのグラフは、決して一直線ではない。治るための条件が整えば、身体は確実にワンステップ、ツーステップと階段をステップアップしていく。しかし、次の段階に行くまでにはそれなりの改善するための条件が身体の中に必要なのである。すなわちステップとステップとの間には、足踏み状態、場合によっては症状の増悪状態がみられることもある。

このような時期に、決して焦ってはならない、また精神的にも落ち込んではならない。次の顕著な回復が現れるまで、毎日治るための条件を与え続けるしかない。自分の身体を自分で治しているのである。モノに頼って、他力本願の治療を行なっているのではない。あくまでも、自力本願であることを自覚しておくことが肝要だ。

毎日の身体の変化に気付き、例えわずか回復であっても自分をほめて欲しい。毎日「生きている」ことに喜びを感じ、身体に感謝する気持ちを持って欲しい。

過去3ヶ月から5ヶ月と、よく後ろを振り返って症状の回復を自覚し、改善に自身を持ってほしい。決してネガティブになってはならない。常にポジティブな考え方で明日を見つめ、完治後の自らの素晴らしい顔を、身体を思い浮かべ毎日の湯治を頑張って欲しい。

自分の回復が思うようにいかないことを気に病み、気落ちして殻に閉じこもってしまっては、手の差しのべようがない。また、途中で他の治療法に走ったり、自然療法に理解のない医師の言葉に惑わされたり、再度どっぷりとステロイド治療にはまってしまい、あとで眼障害などが発症した時点で気がついても、「時すでに遅し」である。

何度も繰り返すが、「治すための必要条件」を毎日こつこつと与え続けることしかない。そのようにして、身体を自然に癒していけば、必ずある日突然、身体の大きな変化に気付くことになる。

軽症・中症状の人々であれば、回復の遅い人でも12~15ヶ月にはそのほとんどが80%程度の回復状態に到達する。この段階になると、自覚症状の痒みや炎症の消退が始まり、身体は楽になり、睡眠も5~6時間とまとまった深い眠りが得られるようになってくる。

しかし、決して油断してはいけない。人によっては、途中二度も三度も風邪をひいたり、皮膚が「感染症」にかかったりすることもある。微熱・高熱が続くことも、リンパ節が腫れることもあるまた、血液検査で白血球が増えることも当然ある。

免疫力・抵抗力が身体に「根づく」までには、それらは頻繁に起こることなのである。なぜなら、身体は常に免疫を作動させて、健康な状態を取り戻すために闘っている、したがって、いかに根気よく湯治を実践し、これらの状態を乗り越えるかが、自然療法の「極意」となってくる。

身体を癒すための条件を満たし、揺るぎないしっかりした精神で、自己の「治癒力」を信じて頑張ること、これしかない。そうすれば、やがて自分の身体に素晴らしい発見をする時期が必ず訪れる。「ガサガサ」した皮膚が「ツルツル」「スベスベ」の柔らかい皮膚に変化し、日中ではほとんど痒みを感じない、湯上り後や就寝時にわずかな痒みを伴うが、夜は熟睡する日が多くなる。

日常にはアトピー性皮膚炎を忘れ、他人と同じことができるようになる。他人の目が気にならなくなり、毎日自分の姿を鏡で見るのが楽しみになる。なぜなら周囲の人が見ても、普通の皮膚に見えるようになったからである。このような時点の回復状態は、85%程度だろう。90%の回復状態になると、日中も就寝時もまったく痒みを感じない。

運動で汗をかいた時、身体が疲れた時、強いストレスを感じた時にわずかに手を動かしたくなるという程度である。人によって色素沈着(皮膚の黒ずみ)は残るが、それは時間の問題で次第にそれも確実に消退していく。決して心配することはないが、まれに70%~80%の回復期に手や足に疣が多数できたり、にきびのような膿疣疹(膿の溜まったできもの)が身体全体に出たり、蕁麻疹が出たりすることがある。しかし驚くことはない、これらはその後、90%の回復状態においてすべてが消退するものだからである。

さて、自覚症状がまったく認められない状態までくれば、ほとんどの人は自分なりの生活をしている。その生活の基本は、「規則正しい生活」である。毎日充分な睡眠をとり、湯治を日常生活の一部として、入浴時に身体を洗い、湯船につかり、時間があれば30分以上しっかり身体を温め、汗をかくことを維持する。

このような生活を続け、その後3~5ヶ月経過してもアトピー性皮膚炎の症状が現れなければ、その時点ですでに「健康体は根づいた」、つまり完治したと判断してよい。

その後においては、「ものの考え方」が大切になってくる、人は「生身」の身体である。二度と病気に陥らぬよう、決して「薬物」に頼らず毎日をベストコンディションで上手に身体をコントロールしていくつまり「養生」が大切なのである。

たとえどんな病気であれ自分の生活の中でつくり出したものである以上、それを自分の生活の中で自然に癒すことができて当然である。健康な身体が病に陥るのも、病んだ身体を健康に戻すのも、結局は毎日の生活習慣の中にその「要因」があるということだ。

生きていく上で毎日の生活がいかに大切か、自覚症状のまったく認められない状態まで回復した人は、これらを長い期間かけて「学習」したのである。
このことを決して忘れずにその後の養生つまり自らの身体を労わる生活をしてほしい。