アトピー性皮膚炎自然療法

理解と自覚がすべての中症状

中症状の判断としては、ステロイド剤の使用頻度は別にして数ヶ月以上使用しており薬物の使用中には皮膚は比較的良い状態で保たれていることがあげられる。ちなみに使用頻度については、たとえ2日おき3日おきであろうと長期間にわたり10日の間に1回以上使用しているということであれば頻繁であると判断したほうががよいといえる。

「自分はほとんどステロイド剤を使っていないのに離脱症状が出た」と嘆く人は多いがステロイドの離脱症状は、どれだけ強い薬を使用したかあるいは一度に大量に使用したかよりも、どれだけ長期間にわたり使用し続けたかということで決まってくる。

一時的に全身にステロイド剤を塗るよりも、ある一定間隔で長期間使い続けた場合のほうが副作用や依存症は認められやすいのである。その人の体質や代謝状況により異なるので一概には言えないが、おそらく最短間隔が1週間、継続回数30回くらいがポイントとなるだろう。

1週間に1度使っている人であれば30週間(約7ヶ月)3日に1回の人であれば90日(約3ヶ月)使い続けた頃に依存症の状態が認められ始めるということになる。

ただし、これはあくまで一つの目安であって、これ以下の使用であれば依存症や副作用が起こらないというわけではない。それぞれの生活などにも関わっておりさらに個人差もある。たとえ1ヶ月おき使用であっても結果的にその継続期間が3年~5年となれば、結局依存症の症状が認められることがある。さらに、あまり使っていないように思っていても実際使用した日を記録してみると意外に多く使用してきたことが分かる。「痒みが出た時だけ随時使用した」という人ほど実に頻繁に使用している場合がある。

また、「弱いステロイドだから大丈夫」「数分の1にステロイドを薄めているから大丈夫」という医師がいるが、ステロイドの強弱は含まれているステロイド成分の量で決まるのではなく、皮膚からの吸収の度合いで決まる、したがってどんなに「弱いステロイド」であっても、継続使用することにより、内分泌機能へ影響が診られやすくなることことは云うまでもない。

どちらにしてもステロイド剤に依存した状態かどうかは、中止してみれば一目瞭然である。次の項であげる症状が段階的に出てくれば、間違いなく「ステロイド皮膚症」に陥っているといえる。またステロイド軟膏を使用していても症状が改善しなかったり、あるいは皮膚の色が赤黄色か赤黒い状態で、部位によっては象皮症のごとく肥厚が認められて固い場合、または皮膚の状況が比較的よくても身体の他の部位における異常状態(眼障害など)が認められる場合、ステロイド剤を服用している場合などは後に述べる重障害の部類に属する。

さて中症状では、どのような「離脱症状」が現れ、どのような回復経過をたどるのか次に述べていこう。

まずステロイドを中止すると、早い人で翌日、遅い人でも1週間後くらいには、皮膚に変化が診られるようになる。皮膚のあちこちが赤くなり、場合によっては盛り上がるなどの症状が認められる。

赤いポツポツした小さな湿疹がひじの内側、首筋、ひざの裏などの比較的柔らかい部分に現れ、さらに背中、顔に出てくる人もいる。痒みは徐々に強くなるが、離脱の初期の状態では、他に集中することがある時(好きなテレビを見たり、遊んだり、電話中など他に意識が集中している場合)には、痒みを感じないことが多いもので、痒みが現れやすいのは、食事後、入浴後、就寝後などの身体が温まった際やイライラした時、怒ったり悲しんだりといった感情の起伏の激しい時である。また一方的に強く引っ掻いてしまい出血を伴うこともある。

さらに体調面では、それまで自覚していた倦怠感や手足の冷え、便秘などの自律神経失調症にかかわる症状や不定愁訴の症状が、より一層自覚できるようになってくる。おそらく中症状者の場合、この辺りまでの症状については経験している人が多いのではないだろうか。

しかし、こうした状態が現れると慌ててステロイドを塗り症状を抑えてしまう。これが、「時々しか」「あまり」使っていないという人の使用状態であるといえる。当然この段階で薬を使ったのでは。云うまでもないがふりだしに戻る。そしてこの離脱症状の初期の状況を超えると、いよいよ本格的な離脱が始まることになる。まず、皮膚の赤みを帯びた箇所を掻き壊すと、出血後に異臭を放つ黄色い体液が出始める。痒みは徐々に広がり、ちくちく、むずむずした痒みが襲うようになる。

副腎機能のダメージが少なかった人の場合、掻き壊しが全身に広がることはなく赤みも部分的に出たり引っ込んだりを繰り返す程度で、痒みは続くものの早ければ3ヶ月、多くは6ヶ月以内に離脱後期の状況に移行する。これに対し、副腎機能に強いダメージがある場合には、その後、炎症は徐々に全身に広がり、ステロイドを塗っていなかった部分にも掻き壊しが認められるようになってくる。

離脱中期の状況になると、リンパ節が腫れ皮膚は徐々に黒ずみ始め、浮腫が顔、足などに認められやすくなり、場合によっては部分脱毛、半脱毛、全脱毛と、眉をはじめ身体中の毛が一時的に全部落ちてしまうこともある。黄色い体液は、炎症や掻き壊しのない場所からも出始め、時々身体の内部から気が狂うほどの突き刺すような痒みが襲う。

掻いても掻いても痒みはおさまらず、皮膚をえぐり骨をもかきむしりたくなるような掻痒感で掻き壊しは、さらに広がり上半身あるいは全身が血だらけという状態になる人もいる。体調面では不眠状態が続いて夜はほとんど眠れない。

身体の副腎機能が少しでも刺激を受ける明け方(人によって前後差はあるが、「副腎」は夜の11時頃ステロイドホルモンの産生・分泌をやめ、明け方午前4時頃から再び産生・分泌機能が活発になるため)になると、ようやくうつらうつらできる程度で、中には昼夜が逆転する人も多くいる。したがって一日の睡眠時間が4~5時間と少なくなり、さらに症状からみても熟睡は難しい状態が続く。

身体の変調も著しく、倦怠感は強くなり微熱や高熱が続いたり、夏に寒さで震えたり、冬に薄着でも汗をかいたり、多量の寝汗をかいたりなど、体温調節ができない状況になって女性では生理が遅れたり、生理痛がひどくなったり、また停止するケースが認められる。精神的にもイライラして不安やちょっとしたことに躁鬱の状況が認められたり、音に対して敏感に反応する人もいる。肩こりや手足に冷え、身体の異常なほてり、便秘と、血液循環不全の症状もさらに強く認められるようになる。

またステロイドの副作用で、免疫力、抵抗力の低下により風邪をひくことが多くなり、皮膚はヘルペス、カボジ水痘様発疹症、黄色ブドウ球菌、白癬菌による感染症にかかりやすい状態である。離脱の中期には、これらの症状が部分的、あるいは全部にわたり年に2回も3回も繰り返し出る人もいる。

この時期に医者に行けば間違いなくこう言われるだろう。「一体何をやっていたんだ、ますます悪くなっているではないか、すぐ薬を塗って治しなさい」、「何でこんな状況まで放っておいたんだ、すぐ入院しなさい。」こうして離脱症状を「悪化」と捉えた治療を施されることになれば、当然その治療はステロイド剤によるものしかないわけであるから、再びふりだしに戻ってしまうことになる。

こうした時「ものの考え方」がとりわけ大切になってくる。アトピー性皮膚炎を治していく上で、どのようなことが大切なのかを良く理解できていなければ、症状が現れるたびに医者に行き緊急入院してはステロイドを塗布、注射、点滴ということになってしまう。

したがって薬によって離脱症状がいったん治まっているようにみえても、薬を中止するたびにいつまでたっても同じような離脱症状を繰り返すばかりで、ステロイド治療の「輪」の中から一向に抜け出すことができない。そのままその輪の中をぐるぐると廻っていれば、やがては中症状から重症状へと移行してしまう。

また患者自身がこれらを理解した上で湯治に励み、つらい症状を乗り越えようとしても、周囲の家族が同じように理解していなければ強引に病院に連れて行かれることになってしまう。そのために家族全員の理解が得られなければ離脱療法は出来ない。気も狂わんばかりの痒みと全身から絶え間なく流れ出る体液、浮腫や掻き壊しの傷が全身に認められ日常生活すらままならない、仕事や学校へ出かけるなど論外である。

夜は眠れない、精神的にも不安になりイライラする、食欲はない、痒みは常に全身を襲う、流れ出た体液はやがて固まって皮膚がつっぱり、ちょっとでも動くとパリッと音を立て皮膚が割れ、血がにじみ出てくる。そしてその後再び体液が流れだし、それらを幾度となく繰り返す、患者自身にとってはまさしく生き地獄である。その意味で、この離脱症状は麻薬の禁断症状と体裁を同じくしているといってもよい。

この苦しい時期、何も使わずに乗り越えるしかない、麻薬の禁断症状が現れている時には、その症状を抑えるものは、やはり「麻薬」しかない。しかし誰もが知っているように症状を抑えるために麻薬を使っていては、いつまでたってもこの輪から抜け出すことができないし、いずれ「廃人」となってしまう。ステロイドの離脱についても、この症状を抑えるのはステロイド剤しかないのである。

しかしステロイド剤を使えば離脱症状は再び現れることになる。ステロイド剤を使い続けて一生を異常なく、過ごしていけるのであれば、それはそれで大変良いことかもしれない。また患者が「どのみちこの病気は、原因不明、治療法不明の難病であるから治すことをあきらめ、たとえどのような副作用が出ようとも最後に行き着くところまでステロイドを使用して生きていく」というのであればそれもその人の考え方、生き方であるから仕方がないと思う。

しかしステロイド剤の長期使用には「障害者」となる危険性が常に秘められている、そうなってからでは手遅れである。ステロイドによる離脱症状は、最終的には必ず自分の身体で乗り越えることができる。しかし、その副作用により出現した眼障害などの「障害」は再びもとの状態にもどすことはできない。現れる状況は違うにしろ、その意味するところは、麻薬常用者の末期中毒症状とまったく同じだといえるのである。

だが、これらのつらく苦しい離脱症状は決してエンドレスではない。完全克復、つまり「完治」という「終着駅」に辿り着くための、ひとつの通過点にすぎない。1日2時間から3時間と行なう湯治生活には確かにつらい時期もある。しかし、毎日治るための必要条件さえ与え続ければ、身体は必ず改善へと向かい、やがて中期の症状を過ぎ後期の状況へと移行する。

その他の疾患が原因し副腎機能が不全状態に陥った場合は別であるが、それ以外の人は期間の差はあっても全員離脱明けを迎えることが可能である。結局、これらの離脱中期の状態は3ヶ月から人によっては1年位続くこともあるが、ある日突然、身体の変化に気付く時期がくる。

成人の中症状者で、おおむね10ヶ月間、1日合計3時間を超える湯治を実行した場合、つまり延べ1000時間に到達する時期では、ほとんどの人が離脱症状をクリアし症状の消退を実感し始め、早い人であれば痒みや炎症がまったく消退「完治」の状態に到達する場合が多い。しかし、まだつらい症状が続いている人にとってはこの時期辺りが正念場である。

身体から絶え間なく、流れ出ていた異臭を伴う黄色い体液が、やがて透明の体液に変わる時期がくる、そして皮膚が、がさがさしたカサブタ状態から白く粉を吹いたような乾燥した症状に変化する。黒ずんだ皮膚の色素沈着が多少薄れてくるようになり、肥厚している皮膚が次第に柔らかい肌に変わってくる。絶え間なく、続いていた痒みも徐々に身体の中から刺すような強い痒みに変わり、それが強くなったり弱くなったりと変化し、次第に弱い痒みに落ち着いていく、そして痒みのない時間が多くなってくる。

常に赤みをおびていた皮膚が時間帯によっては赤みを伴わなくなり、浮腫が減り、体温調節が少しずつ出来るようになり、身体が楽になってくる。寝汗をかかず手足の冷えもなくなって便秘も治り毎日便通があるようになる。

このような症状が次々と身体に認められるようになってくる。これらの症状の改善は、自律神経の交感神経、副交感神経の働きのアンバランスが正され、正常な働きへと変化してきた現われといえる。症状の変化は人によって多少異なるが、こうした経過をたどり後期へと移行する人がほとんどである。

しかし油断は禁物である。なぜなら離脱は後期へと移行したが、離脱が「終了」したわけではないからである。副腎機能がその本来の機能の数十%程度をようやく取り戻しただけであり、またアトピー性皮膚炎が治ったわけでもない。あくまでも、「ステロイド皮膚症」というステロイド剤による二次疾患が、後期の状況へ移行しただけなのである。しかしそれでも出口はもうすぐそこにある、このような時期にこそしっかり湯治生活を続けることが大切である。

後期の痒みは、離脱の初期と同様に、むずむず、ちくちくしたものだが、夜は明け方から昼近くまでは何とか眠れるようになる。眠れるようになると、身体が徐々に楽になり、精神的にも少しずつ明るさがみえ始め、活動的な生活を行なう元気が出てくる。そうなればしめたもの、後は治すための必要条件を与え続ければよい。「良い生活行動」が身体を「良く」し、さらに「良くなる」ことにより「良い生活行動」ができてくる。

いわば良い循環の輪がまわり始めるのだ。このような状況が訪れると、離脱は少なくとも一旦終わりを遂げ「ステロイド皮膚症」が克服できたことになる。次は、いよいよ「アトピー性皮膚炎」の克服である。しかしいうまでもなく、治し方の基本的な考え方は、「ステロイド皮膚症」も「アトピー性皮膚炎」も同じで、そのままの湯治生活を続けることが大切である。

ただし、ここで問題がある。それはいったん離脱が終わり回復期に入って順調に経過したかにみえた人が、再度離脱の症状に見舞われることである。この場合には、二つのケースが考えられる。まず一つ目は、体調の問題、痒み・炎症が楽になったり、消退することにより、本人はすっかり治ったものと判断し、私生活を優先させストレスをため、湯治をおろそかにし、夜更かしが過ぎて睡眠不足になり身体を疲れさせ、その結果、毎日のそれらの負荷を身体が処理できず再度悪化するというケースである。懸命に頑張っているにもかかわらず、こうして中には2度~3度の離脱を繰り返す人がいる。

次に二つ目のケースとして考えられるのは、内分泌の補助機能の問題、副腎皮質ホルモンの中で、ステロイド剤として使われている「糖質ホルモン(コルチゾール)」は、生命維持にとって不可欠な大切なホルモンである。

そこで身体は急激なホルモンの消費状態、もしくは何らかの原因による欠乏状況に対応するために、血液中に「CBG(コルチゾール結合グロブリン)」というものを持っている。このCBGには、血中におけるコルチゾールを一時的に捕え、「貯金」しておく働きがあり、身体がコルチゾールの慢性的な欠乏状況に陥った場合に、この貯金を解いて、血中にコルチゾールを放出するのである。

つまり最初の離脱期をクリアして回復期に入ったかにみえた人の中には、このCBGの貯金を使うことにより、一時的に症状を回復させていた人がいるのである。しかし副腎機能が回復したわけではないから、貯金を使い果たせば、当然再度の離脱症状は避けられない。

また、副腎機能は非常にデリケートな器官であり、一時的な回復がみられても、何らかの要因によりすぐに後退することもあるし、また先のように患者は「治った」と勘違いし、とたんに無理な生活を再開することもある。そのような場合には、身体はその無理な生活が原因でアトピー性皮膚炎を「必要」としたわけであるから症状の悪化が起きて当然である。風邪の病み上がりの時に無理をすると風邪をこじらせやすいのと同様で、再び副腎機能の低下による「離脱症状」が認められることになってしまう。

どのような軽症者でも、身体の異常状態を正し、正常な機能に戻し、さらに定着させるためには最低でも1年が必要なのである。

このように、二度、三度の離脱症状が現れる患者も中には大勢いる。ようやく離脱が終わったと思って安心していたところに次の離脱が現れると精神的に極端に落ち込む人も出てくる。それらの落ち込みはしかたないにしても、回復経過には決して良い影響を与えない。完治という終着駅まで良くなったり、悪くなったりを繰り返していくのである。

したがって、身体の仕組みと離脱の現われ方をあらかじめ充分理解し自分は治らないのだ、例外だと自暴自棄になったり、疑心暗鬼になったりしてはならない。

この離脱の経過、離脱によって現れる症状は、ステロイド剤を中止することによりほとんど誰にでも同じように現れるが、回復の状況については、先に述べたようにあくまで私が診てきた「自然療法」「湯治療法」をベースに記している。したがって、その辺りの条件が整っていない場合には、今まで述べてきた回復状況とは異なる様相を呈することになるだろう。
また、先天性脳性小児マヒ、強度の自閉症患者などにも湯治療法を行なう人がいる。

本人の自覚と行動が弱いため、若干回復は遅れることはあるが、それでも家族の愛情と協力があれば最後は痒みや炎症が消退している。しかし、いくら本人に自覚があっても自然療法に理解がない批判的な家族の中にいる患者の場合、または患者本人やまわりの協力者に精神的に問題ある場合には、回復は難しいことが多い。

またカウンセラーの指導も守らず、自分勝手な判断で都合の悪いことは他人のせいにし、自己弁護が強く、根気がなく、忍耐心に欠け中途半端で諦めやすかったり、常に他の治療法が気になり、他人の言葉に左右され、途中で投げ出すような傾向にあり、何かとトラブルが多く自然療法はなじみにくく回復も難しいと言える人もいる。

このことからも本人の正しい理解と自覚、そして家族の理解と協力の重要性がお分かりいただけると思う。このように中症状者の回復期間は、治すための条件の与え方によって多少の期間差はあるが、早い人で15ヶ月程度、遅い人では18ヶ月~20ヶ月くらいかかっている。最終的な「完治」の状態までの期間は約、20ヶ月~24ヶ月といえるだろう。