アトピー性皮膚炎自然療法

自宅湯治の有効性

お湯の温度は37~39度までの不感温度が良い。不感温度とは人間の体温に近い温度で、身体に負担が少ない温度、俗にいう「ぬるま湯」である。ただし温泉と普通の水道水では、同じ37~39度の温度でも体感温度がまったく異なる。温泉の場合は含有化学成分の作用もあり、温熱効果が高い。ぬるい風呂では風邪をひいて逆に病気が悪くなるのではないかと思うかもしれないが、高温では心肺機能に負担がかかり、湯治にはふさわしくない。

一方、37度~39度の不感温度の湯温は、あらゆる雑菌が繁殖しやすい温度でもあり、免疫力、抵抗力の低いアトピー性皮膚炎患者では、皮膚の炎症部からこれらの雑菌が侵入し、「感染症」を起すことがたびたびある。そのため、ある一定の状態まで身体に免疫力や抵抗力がつくまでは、「雑菌」を殺せる、「温泉」を多用することが望ましい。

一般的な入浴では、身体を洗い、最後に41~42度で2~3分程度、身体を温めて上がる場合が多い。湯上り後の1~2分間は確かに身体も暖かく汗が出るが、そのような入浴では、実は皮膚の表面下1センチほどしか温められていない。高温浴のため身体は「温まりやすい」が、湯上り後「冷めやすい」という状態なのである。

さらに、高温浴では皮膚の防衛反応も強く、逆に緊張状態が現れ、温熱効果が乏しい。さらにこの温度では、長い間身体を温めることで貧血や低温やけどなどの症状が起こることもある。「高温サウナ」にもまったく同様のことがいえる。つまり短時間のうちに身体の皮下1センチほどが温まり、汗もそれなりに出るが、防御反応によって身体の芯まではなかなか温まらず、そうなる頃には高温のために、貧血で倒れて意識がなくなってしまうので危険である。

湯治とは「湯で治す」一つの治療である。したがってその基本は、「温まりやすく冷めやすい身体」ではなく、「いちど温まると冷めにくい」身体にすることである。ぬるい温度で身体の芯まで温めるわけだから、それなりに時間もかかる。しかし、40分から50分、60分としっかり身体を温め、汗をかくことが身体の老廃物を排出させ、新陳代謝を活性化させ、内分泌系・自律神経系・免疫系の歪んで低下した機能の改善をもたらすのである。

特に、長い間薬物を常用している人、暴飲暴食の人、食生活の偏りがある人の場合、血液は汚れ、粘っこい状態になっている。老廃物・脂肪・コレステロール・薬物などが血管壁にこびりつき、血管の内腔は徐々に狭くなり、血流障害が起き、酸素・栄養素・免疫物質を毛細血管まで送り届けることができなくなる。また身体の隅々から老廃物を排出する作業までもが停滞し、身体の機能低下が続く、そして長い間重ねてきた悪い生活習慣によって血流障害が起こり、最後は取り返しのきかない疾患、癌を筆頭に肝臓病・腎臓病など、また生活習慣病(糖尿病・高血圧・動脈硬化症・心筋梗塞・脳梗塞など)になってしまう。

したがって毎日2~3回、それぞれ30分~40分の湯治を行なうことで血液の循環を良くし、また常に清浄な血液を保ち酸素、免疫物質、栄養分と体の隅々まで送り届け、さらに体を温め、しっかりと汗をかくことによって、老廃物を排出する作業を日課として行なえばアルツハイマー、認知症、脳障害、動脈硬化症、心臓障害等生活習慣病に対する不安は全くなくなる。

このようにして毎日の生活習慣の中に「湯治」を取り入れ、しっかりと睡眠をとり、食生活を正せば、人間はさまざまな病から回復できるし、もともと回復できるようにつくられている。またこのような生活は、健康で120歳まで現役で生きるための、そして不老長寿の秘訣でもある。

湯治の回数であるが、自宅における湯治と温泉湯治施設リカバリーセンターでの湯治では、含有成分による体感温度、身体が受ける刺激にもそれぞれ差があり一様にはいかないものだが、病気を克服するための湯治では、基本的には1日4回を理想としている。一日中湯治ができる場合は、朝・昼・夕方・寝る前の4回、学校・仕事がある場合には、3回となることもある。

しかし成人の場合、基本的に1日45分の湯治を4回行なうことが望ましい。小児の場合は、25分~30分の湯治を3~4回、乳児・幼児に場合は、10分前後の湯治を3~4回行なうのが適当である。

まず朝は起きたときにすぐ40分~60分の湯治をしっかりと行い、昼ごろまでポカポカと温かい身体を保つことが大切である。アトピー性皮膚炎患者の中には夜眠れず、少しでも睡眠時間を確保するために、学校・仕事を一時的に休んで昼ごろまで寝ている人々が多い。しかしそのような場合でも、起きた時点でまず湯治を行なうことが必要である。

自律神経失調の症状が強い人は、湯治後1時間もたたないうちに、身体が冷えきってしまう人が多い。また40~60分と湯治を行なって身体を温めたにもかかわらず、汗が少なかったり、まったく出ないといった人も当然いる。

このような身体を、いずれは同じ37度~39度で入っても、8~10分程度の湯治で汗だくになる状態まで、新陳代謝を高め身体を回復させていくのである。このような身体に変わるまでに、通常で3~4ヶ月、遅い人では7~8ヶ月が必要となる。

次に昼ごろにも、40~60分間の同じように湯治を行い、夕方まで暖かい身体にする。続いて夕方湯治を行ない、寝る前に4回目の湯治を行なう。こうすることで身体に血液の循環不全の状態をつくらせずに、身体機能の「改善」という「歯車」を強引に回し続けるのである。

このように、湯治とは、くる日もくる日も毎日同じことを繰り返す、単純な作業である。もちろん、偏らないバランスの良い食事を心がけ(多量の汗をかくことになるので多少の塩分も必要になる)、毎日充分な睡眠をとり続ける。水分の補給にはミネラルウォーター(オムバス:富士の湧水等)または天然アルカリイオン水(オムバス:飲める温泉水)をお茶、麦茶として1日1.5~2リットル以上飲用する。1日2~3リットルと多量の汗が出るようになれば、当然それなりの水分補給が必要である。そうしないと、脱水症状を起すことになるからだ。

そして薬物に依存せず、このような湯治を行なってから3~4ヶ月が経過すると、身体のありとあらゆる部分に変化が現れ、病状の改善が始まってくる。それはまったく信じられない、体験したことのない「出来事」であるはずだ。

このように1日2時間半から3時間の湯治を始めた当初は、人によっては湯あたり、湯さわりといわれる風邪の症状に似た状態が現れることがあるが2週間ほどで湯治に身体が慣れ、次第にその状態はおさまってくる。

また、一時的に尿の量が少なくなったり、逆に多くなったりする人がいるが、これも心配することではない。慢性的に便秘の状態がある人が、多量の排泄便を出すことがある。便秘の症状は早い人で3~4ヶ月、遅い人では8~18ヶ月という期間で大方は改善され、毎日快便が可能になる。途中で放屁(おなら)の量が増える人も多いが、これは胃腸の改善が著しい証拠である。

食欲が増すのは当然であり、逆に食欲が落ち、疲れが出るようなことがあれば「湯治」の時間を減らすことが大切である。「湯治」は予想以上に体力を消耗させるもの、普段より一食分程度食事が増えても問題はない。

長い間薬物を常用し、内分泌系にダメージを受けている人の場合には、湯治を開始するとお湯の濁りや臭気が強く出る。これは身体の中の血管や血管壁また血液の大掃除をしていると思えば良い。血管の内腔を広げ、血管壁にこびりついた薬物また脂肪等の老廃物を取り除き、体内の血液の清浄化が行なわれているために起きる現象である。

身体が改善するまで、このことは繰り返し現れることが多い、しかし、ごく軽症者では、3ヶ月程の湯治で身体の冷えの症状が取れ、便秘の状態が改善され、身体は常に温かく、眠りも深くなって倦怠感もなく、楽になって、痒みや炎症の消退が始まる人がいる。中症・重症者になると、4ヶ月~6ヶ月~8ヶ月と離脱症状が続き、つらい時期を過ごす人も多くいる。また高血圧、低血圧、腰痛症、痔疾、自律神経失調症、動脈硬化症、膝関節症などの疾患者では、6ヶ月~8ヶ月程度の湯治で、その症状の改善が著しく現れてくる。このあたりの症状まで身体が改善すると、その身体を維持した生活をする限り「脳軟化症」つまり「アルツハイマー」「認知症」の心配は全くなくなる。

このあたりの身体の病状を、湯治を行なう前と比較してみるとよい。身体が常に暖かく楽になった、苦痛が少なくなった。まったく苦痛がなくなった、下痢や便秘が改善されてきた。まったく便秘、下痢をしなくなった。手足の冷えや肩こり、違和感が少なくなった。まったくそれらの症状がなくなった、血圧が正常に戻った、血液検査の結果、異常状態が少なくなってきた。正常値に戻ったというように、身体が間違いなく改善されているはずである。

そして、知らず知らずのうちに自分が疾患者であることを忘れ「行動的」になっていた、ということに気付くであろう。湯治によって身体を温め、汗をかくことが日常生活の習慣として定着し、湯上り後の「爽快感」が得られるようになれば、大成功である。あとはそのまま続ければよい。さまざまな慢性疾患者には、湯治とともに過ごす時の流れが、すべてを癒してくれることになる。

リュウマチや膠原病の疾患者でも、1日2時間から3時間半ほどの湯治を行ない、食生活に注意して睡眠を充分とれば、1年~1年半程度で顕著な改善が自覚できるようになる。
完全に病状の消退が認められる人も実際数多い。