アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患に対して「体質改善」を行なうということが良く云われている。
ここで改善させようという体質は、当然アレルギー体質ということになるのであろうが、今まで述べてきたようにアレルギー体質は決して悪い体質ではない。それどころかアレルギー体質者は、ある意味では生活習慣病に対する防衛機構を備えているといっても過言ではない。
相談に来るアトピー性皮膚炎患者の中には、「こんな身体に生んだ親が悪い」と両親を非難する人がいる。また「嫁がアレルギー体質だから、孫にアトピー性皮膚炎、喘息が出た」と訴える祖父母もいる。そのような認識不足が「離婚」という悲劇を招いているケースも多い。
しかし決してそうではない、アレルギー体質という素晴らしい「贈り物」をくれた両親に感謝こそすれ非難などすべきではないと思う。
もしアレルギー体質がなくアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がみられなければ、身体の異常状態を自覚することは困難である。生活習慣病という形で身体に現われ、初めてそれらの「異常状態」に気付くことになる。これは他人事ではなく日本人の死亡原因の80%は、悪性腫瘍(癌)、心疾患(心筋梗塞など)、脳疾患(脳溢血など)の生活習慣病である。つまり今私たちが行なっている生活は、「生活習慣病になるための生活」といっても過言ではない。
これに対してアレルギー体質者の場合は、これらの異常状態すなわち免疫機能をはじめとする自律神経機能、ホルモン産生、分泌機能など身体のさまざまな「機能」の異常状態の蓄積が少ない段階でアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を身体に現すことができる。さらにアトピー性皮膚炎の場合にはそれらの異常状態はまだ「軽微」であることが多い。
だからこそこの段階できちんとした対応を行なえば、将来訪れる可能性のある重大な疾患を防ぐことも出来るのである・現在のアレルギーやアトピー性皮膚炎に対する一般的な認識には、それらを悪者として捉えているものが多い。しかし、絶対的社会環境が劣悪化している現在ではある意味でこれらのアレルギー体質がない人のほうがむしろ不健康であるということもいえる。
アトピー性皮膚炎で悩んでいる方、アレルギーで苦しんでいる方々に云いたい、「皆さんは決してハンデを背負っているのではない。それどころか、アレルギー体質のない人のほうが、ハンデを背負って生きていかなければならない時代である。しかし現在、アトピー性皮膚炎、また他のアレルギー症状で困っているのであれば、身体に何らかの異常状態が現れているのは確実である。
それならば、体質を改善するのではなく、身体の異常状態に陥っている機能を改善していこう」と。これは何もアトピー性皮膚炎だけに限ったことではない。慢性疾患といわれる病気、生活習慣病などすべての疾患者に必要なのは、体質改善ではなく機能改善なのである。
これまでアトピー性皮膚炎とはどのような病気なのか、なぜ発病したのか、なぜ治らなかったのか、なぜステロイドがアトピー性皮膚炎を悪化させるのか、またどのようにすればアトピー性皮膚炎は治るのかと云ったことについて述べてきた。本書で示してきたアトピー性皮膚炎の捉え方は、現代医療の「常識」とはかけ離れた逆説的なものばかりだったに違いない。
病気がなぜ発症するのか、その病気を治すためには、どのような条件を体に満たせばよいのか、また薬物の病気に対する役割とはどのようなものなのか。この三つだけでも学習すれば、本来アトピー性皮膚炎をはじめとする慢性病のほとんどは自ら治すこともまた防ぐこともできるのである。
自分の健康は他人が守ってくれるものでもない。また病気も他人が治してくれるものではない。しかし自分で守り、自分で治すこと、これは誰にとっても可能なことである。この「自分を守り、自分で治す」ための学習が現在難治性疾患とされている各種の疾患を防ぎ、治すため唯一の方法といえるのである。
難治性疾患は確かに存在する、しかしそれはあくまで現在の医療体制からみた場合であり、その病気の本質的な意味合いから考えれば決して「治らない」ということではない。世の中に医者が治せない病気が無数にあっても、人の自然治癒力で治らない病気は皆無であることを知るべきである。つまり難治性疾患であっても難病ではないということである。
ある高名な医学博士がこう話したことがある。
「現在までに分かっている疾患の中で、先天性の遺伝子欠損などによる疾患を除けば、致死率(死にいたる確率)100%の疾患はない。どのような原因、経過かは不明だが、たとえエイズであろうとも癌であろうとも、自然に治ってしまう人は少数でも必ずいる。そこが現在の医学の限界であり、人間の自然治癒力の素晴らしさの証明である。人は誰でも身体の中に、これ以上のものはない『名医』をもっているのである」と。