アトピー性皮膚炎自然療法

驚異のオムバス療法とその実態

では、薬物に依存せず病体を健康体に戻す自然療法とはどのように行なうのか、オムバスの自然療法の手法を参考に説いていこう。

日本オムバスでは短期・長期の滞在型温泉湯治施設として先に述べた福岡県、原鶴温泉の「九州ホスメックリカバリーセンター」(*2015年6月より休止中)の利用と北海道阿寒摩周国立公園摩周温泉にある「フォレスト・イン摩周苑」の利用があるが、ここでは自宅における温泉湯治について述べていく。

具体的には、温泉水を湧出地で20リットルのビニール容器に詰めて段ボール梱包し、それを宅配便で自宅に届ける。その中には、湧出した温泉そのものを詰めるだけであり。他の何かを混入するといったことは一切ない。日本オムバスは、神奈川県箱根湯本温泉、福岡県、原鶴温泉そして北海道、摩周温泉に泉質の異なる温泉井戸を所有しているが、湧出地から届けられた温泉を自宅のお風呂の浴槽に入れて沸かし入浴を行なうというものである。またこれを、より温泉場の環境に近づけて行なう方法もある。

循環濾過温浴器(レジオネラ菌等の対策済み、)で温泉対応型を使う方法である。これを使えば、風呂の湯が循環濾過され入浴のたびにお湯を交換することなく、一定期間(2日から3日で交換)の入浴が可能となり、さらに一定の温度で常に保温しているため24時間いつでも好きな時に入浴できるというメリットがある。これを利用し宅配された温泉を入れることにより、温泉場と同様の環境つまりいつでも好きな時に温泉に入れるという環境を自宅につくるのである。

さらにその人の症状、体調、生活環境に合わせて、温泉の濃度や泉質を変え、また入浴時間や入浴温度、入浴方法を適宜変化させる。これらのアドバイスについては、温泉療法医師の指導の下、生活指導担当カウンセラーが実施していく。

また循環器を使用せず普通の水道水を沸かしたお風呂に、温泉そのものを20~30リットル程混ぜたり、箱根温泉の濃縮液や入浴剤を使用したりすることもある。ここで一番会員が頼れるのは、アトピー性皮膚炎を克復した会員の生の声、つまり「応援」である。彼らは、友の会の雑誌「あとぴナビ」に克服卒業者として、また「書籍」の克復者の写真に登場後、つらい状態にある会員の応援にかけつけ、実体験に基づき経験談を語り、会員の精神的な支えをしてくれている。いずれにしても湯治を行なう人は、生活環境や入浴状況そしてアトピー性皮膚炎の回復状態に合わせて顧問の医師や生活指導担当のアドバイスを受けていく。

ただし、やみくもに温泉に入浴すればよいというものではない。温泉湯治とは、あくまでも身体の機能を回復させていくための「補助的手段」であり脇役である、主役は、その人の身体機能に異常をもたらした生活環境、生活習慣の改善にあるわけであるから、そうした改善の必要性を「自覚」しながら「温泉湯治」を実行することが大切である。

また皮膚の状況、身体の状況については、自然療法に理解のあるクリニックや病院において適宜診察を受け、場合によっては一時的に薬物を使用することもある。また血液検査など西洋医学的見地からも生活を管理し、現在の自分の状況をしっかりと把握してもらう。温泉湯治療法は、自ら持つ自然治癒力を活性化させ、アトピー性皮膚炎を自然消退させようというものであるから一朝一夕、そう簡単に結果を出せるものではない。

そこで、毎日の生活状況やアトピー性皮膚炎の状態を客観的に判断するために、自らの日常生活行動を記録管理しまた症状の経過写真撮影を随時自宅で行い、患者自身および家族に回復の過程を確認してもらうようにしている。また、実際の生活環境の改善については、家庭内の化学物質の除去、電磁波問題などをトータル的にアドバイスし、食生活の指導も行なう。

さらに、アトピー性皮膚炎を克服していく過程の中で生じる家族を含めた精神的不安やストレス、そしてトラブル等の相談に乗ることもある。さらに自然療法でアトピー性皮膚炎を克服した人々、またその家族が参加して的確にアドバイスすることもある。全国アトピー友の会の協力によるオープンカウンセリング(集合学集会)やグループ学習会として常時行なわれ、私自身参加する機会もある。また講演会、学集会、セミナーも随時、全国各地で行なっている。

これらの一連の学習システムが「自然療法」であり、その「ノウハウ」は、ありとあらゆる手法を用いた「総合学習カウンセリング」であり、しかも3年~5年と続く徹底したカウンセリングシステムである。

自然療法ではアレルゲンを除去したり、皮膚の痒みを一時的に抑える方法をとらない。痒みは、アトピー性皮膚炎をもたらした何らかの原因の結果生じた「症状」であり症状にいくら対処しても根本的な解決にはいたらないからである。
また食事療法についても、アレルゲンとなる食物をとらなければ確かに痒みや炎症を軽減できる場合もあるだろうが、痒みが出ないということとアトピー性皮膚炎が治るということはまったく別の問題で、何かの機会にアレルゲンに接すれば、その都度また痒みや炎症が出ることになる。

前章の花粉症の記述でも述べたがアレルゲンとなる物質が悪いわけではない、そのようなズレタ働きをする人の身体が悪いのである。要は何を食べても、またダニだらけで、ほこりだらけの家に住んで居ても、ペットが居てもそれらがアレルゲンとなって痒み・炎症が出ない身体にすることであり、何より身体の異常状態を改善してしまうことが最も大切となってくる。そのため、アトピー性皮膚炎の原因となる可能性を含む問題はすべて解消させていく。

慢性的睡眠不足や不規則な食生活習慣、また疲労の蓄積による慢性疲労、運動不足、ストレスをためやすいという悪い生活習慣などは、カウンセリングによって徹底的に解消させていく。ただしこれらの解消も疾患者が受動的に行なうものであっては意味がない。

それでは継続も難しいし必要な量をしっかりとこなすことも困難になる。また疾患者を支えているのは同居する家族や周囲の人々である。したがって、その家族の理解も不可欠なのである。そこで、これらの学習カウンセリングを受けて「自然療法」を行なうにあたっては考え方や環境が整っているかどうかを当初から見極めることが大切になってくる。

アトピー性皮膚炎は、確かに「難病」ではない。治していくための「方法」も実際はとても単純なものである。しかしその単純な治療法の裏には、このように本人、家族、友人、克服者やその家族、生活指導担当そして医師の指導さらには学習会と、完治までにはさまざまな人々の徹底したタイムリーな指導そして支えを受けながら苦しい日々を乗り越えて行くのである。