アトピー性皮膚炎自然療法

治療が引き起こすステロイド皮膚症

アレルギーと科学物質の研究で有名な北里大学の動物実験では、化学物質が軽微であれがあるほどアレルギー反応は生じやすく化学物質の量が増えるにしたがってそれらの症状が消退していくということが分かっている。しかし、アレルギー反応が消えればよいのかというとそうではなく化学物質の量が増えるにつれ今度は中毒症状に移行する。

つまりアレルギー反応は、その後の中毒症状に対する警告信号であったということなのである。

したがってアレルギー体質については一般的に病的な体質と捉えられがちだが、実はまったく逆で、むしろそれがない人よりも健康であるといえる。なぜなら癌・生活習慣病などの生命に直接危険が生じる状態に発展する前に、それに対処させるための警告を発することができるからである。つまりアレルギー体質そのものは身体のひとつの防衛機構であり、アレルギー体質のない場合には、より一層の注意が必要となることはいうまでもない。

このようにアトピー性皮膚炎の発病起因は、その人の生活習慣、生活環境の中に身体に異常状態を生じさせる要因があって、それらが軽微であるからこそ皮膚に「警告」として症状が現れているということに他ならない。

アトピー性皮膚炎は本来、「軽病」である。それは身体にとっての一つの防衛反応でもあり、身体を嗜虐的に悪くさせるものではないということである。

また乳児が生後間もなくアトピー性皮膚炎を発症する場合、生活環境は関係しないのではないかという質問を受けることがあるが、このようなケースでは、両親の婚前の生活環境に問題があることが多いのも事実である。

特に妊娠中の母親の生活習慣、ストレスを含む生活環境は、その時の体調と密接にかかわる。胎児は胎盤を通じて母親と一体なのだから母親が自律神経失調の状態にあれば、何らかの影響を受けても不思議ではない。

また妊娠時の両親の体調も「遺伝」する。実際生後間もない乳児のアトピー性皮膚炎患者の両親に聞き取り調査をしたところ、それぞれに強度の自律神経失調の症状が認められる夫婦が多く精神的、身体的に負荷をかかえた日常生活つまり睡眠不足、過労、仕事上のストレス、食生活の偏りなどが妊娠時の母親もしくは父親、あるいは妊娠期間中の母親に認められている。このように両親の身体の良い部分も悪い部分もそれぞれの身体の「条件」が、子供に受け継がれるのが遺伝というものであり、アトピー皮膚炎の発症にはいずれにしてもこれらの生活要因がからんでいるのは事実なのである。

以前、ある新聞でアトピー性皮膚炎のことが取り上げられ有名大学の皮膚科の教授が、アトピー性皮膚炎について「ステロイドはあくまで炎症を抑える薬であり病気そのものを治すわけではない。しかし、アトピー性皮膚炎を完全に治そうという完璧主義が間違いのもとで近視や糖尿病などと同じく治療のゴールを日常生活に支障が出ないレベルに設定することが大切である。またダニなど多岐にわたるアレルゲンやストレスなどアトピー性皮膚炎の悪化因子を完全に取り除くことは不可能に近い。遺伝子要因も関与するため遺伝子治療でも行なわない限り完治しない。完治を目指すことから症状をコントロールすることに発想を転換して欲しい。ゴールから導かれた合理的な治療こそ必要だ」

さらにアトピー性皮膚炎の治療方法の第一選択は、

  1. 炎症を抑えるステロイド 
  2. 抗アレルギー剤などのかゆみ止め 
  3. スキンケア

この三点で患者の80%はアトピー性皮膚炎の症状をコントロールできるという。このようなアトピー性皮膚炎に対する医療界の認識がむしろアトピー皮膚炎を治らなくしている。

アトピー性皮膚炎治療の視点を皮膚を中心としたもののみに置き、また治そうとすること自体が間違いで、症状をコントロールし一生つき合いなさいと云う。このようにアトピー性皮膚炎を「難病」と決めつけているのは治すための治療を放棄しているのと同じで、治す意志のないコントロールを目的とした治療であれば、治るはずの病気も治るわけがない。

アトピー性皮膚炎の患者が望む治療とは、アトピー性皮膚炎と上手につき合っていくものではない、肥厚が全身を覆い、痒みが全身を襲う炎症により、黒ずんだ皮膚で医師に救いを求める若い女性に対して「一生治りませんから薬で上手に抑えていきましょう」という医師の言葉がどれだけ患者を絶望させるのかを分かっているのだろうか。

アトピー性皮膚炎に限らずどのような疾患でも、精神的なものが症状に与える影響は非常に強いものがある。これからの輝ける人生をすべて否定された患者の気持ち「不治の病」と宣告された若い人々の心の痛みに気付いて欲しいものである。

アトピー性皮膚炎の患者は、アトピー性皮膚炎を「治したい」のである。そしてそれは決して無理なことでもない。今の医療がうまくつき合っていきなさいというのは「アトピー性皮膚炎」ではなく実はステロイド剤と、そしてそれにより引き起こされた「ステロイド皮膚症」のことなのである。

治す治療を放棄し症状をコントロールする治療を施し、さらにはそのコントロールする治療が新たな疾患であるステロイド皮膚症を引き起こしている。このような治療にあたっての「認識の違い」「誤った治療法の選択」などが、現在の医療においてアトピー性皮膚炎を治らない病気つまり「難病」としてしまった最も大きな原因である。

現在医師が行なう治療法のほとんどは、アトピー性皮膚炎の原因である身体の異常状態を治療しているのではなくアトピー性皮膚炎により生じた皮膚の炎症・痒み自体を治療している。

第一の問題点は、「原因療法」ではなく「対症療法」であるということ、ステロイド剤などの薬物だけではなくアレルゲン除去、食事制限、部屋の掃除など医師が行なう治療のほとんどは「痒み」「皮膚」に対するものとなっている。

そして第二の問題点は、この痒みや皮膚の治療に対してメインに使われているステロイド剤の長期連用が、新たな疾患としての「ステロイド皮膚症」をつくり出しているのである。この二つの原因が、アトピー性皮膚炎を現在の治療では治らないつまり「難病」と認識させている「元凶」といっても過言ではない。

現在、三歳児の三人に一人がアトピー性皮膚炎の症状が認められるという。また小児に限らず今や国民の三人に一人、つまり約4000万人々に何らかの形でアレルギー疾患が出ているという。

多いのはアトピー性皮膚炎・花粉症・鼻炎・喘息などの患者でこれらのアレルギー疾患者は毎年激増の一途でとどまるところがない。なぜアレルギー疾患者はこのように増え続けるのだろうか。

地球規模で起こる温暖化現象をはじめ、大気汚染など自然環境つまり絶対的な環境の悪化は当然のことながら、今や私的環境の悪化が問題となっている。化学調味料や食品添加物などの使用による食生活の悪化、ストレス社会がもたらす「心」の環境の悪化、個人の生活習慣(慢性的睡眠不足、ドラッグ常用等)の悪化と人間の身体を確実に蝕む要因が多くなり「人体」がそれらによって受けるダメージを「処理・消化」できないものへと変わっているからに違いない。

しかし残念ながら我々は、これらの悪要因を受けながらも生きていくしかない、文明を開き、文明を築き便利な住みやすい世の中をつくってきた見返りに逆に人間自身が蝕まれるという大きな代償を払わねばならない時が到来しているのである。

この「代償」の代表的なものがアレルギー疾患と考えてよいだろう。つまり人体の持つ「許容量」をはるかに超える量の化学物質、薬品、食品添加物、残留農薬やストレス、抑圧、疲労などの「負荷」を人体が日常の生活で処理できず「免疫機能の異常」が起こり「生体防御機能低下」となって現れ、それらのアレルギー症状が出現したものなのである。

これらのアレルギー疾患を克服するためには、人間の持つ「自然治癒力」を活性化させ正常な免疫が備わった身体にすることが唯一無二の方法である。しかし実際のアレルギー疾患の治療では依然として薬物に頼る対症療法が中心となっている。薬剤等の化学物質の影響も受けているアレルギー疾患は同時にこの薬剤を中心とした治療によりさらに免疫機能低下に陥り「慢性化」「難治化」の道をたどることになってしまった。

なぜこのような治療が主流なのだろう・・・・・。それは、いまだに医療界がアレルギー疾患を原因不明、治療法不明として定義付け、医学専門書でも「本症の根治的治療法は存在しない」と決めつけ医大でもそのような教育を行なっているからであろう。

つまり現代医療の医師は医学の基本である生物のレイテントアビリティー(潜在能力)つまり「自然治癒力」「自己治癒力」「自然良能」というものを理解していない、あるいは理解していたとしても治療の中に取り入れようとしない、また確かな表現で言えば取り入れられないということもいえる。

また医師になってアトピー性皮膚炎の治療を始めた当初からステロイド剤を使用し、それを使わない治療を行なったことがないためにステロイド剤を使わない、つまり自然治癒力にまかせた治療効果を医師自身が「知らない」「分からない」「理解できない」ということでもある。

アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患の初期症状は、アレルギー体質者つまり過敏症の体質者の日常生活において精神的・身体的に体のバランスが崩れ自律神経失調の症状が進みさらに、ある一定のラインから機能(免疫力)が低下した場合に身体のある部位に「危険信号」としての「症状」が出現し、逆に一定ラインよりその機能が上昇すると症状が消退するという「単純性疾患」「単純性皮膚炎」の様相を呈している。

つまりその人の身体の異常状態を示すシグナル、アトピー性皮膚炎では「警告信号」としての症状が単に皮膚に現れただけであり、初期の症状としては「皮脂の減少」に伴う肌荒れや「皮膚掻痒感」がみられ、部位によっては赤みが伴った炎症が出現する程度である。この段階で「警告」の「もと」である身体の異常状態を「解決(生活改善)」することができれば、その症状は自然に消退してしまう。

このようにアトピー性皮膚炎は本来「難病」とはほど遠いものなのである。乳児の中には、親から受け継いだ自律神経失調の体質による免疫力の低下がみられ免疫システムのズレから生後二~三ヵ月後に「単純性皮膚炎」の症状を発症する者もいる。

初期の症状としては乳児性湿疹・脂漏性湿疹という状態であるが、次第にアトピー性皮膚炎に変化し、その後、患者によってはアレルギーマーチいう、いわゆるアレルギー症状の変化で、アトピー性皮膚炎から喘息へ、喘息からアトピー性皮膚炎や鼻炎へといった変化を繰り返し、徐々に難治化いくケースが最も多い。

季節的な要因、また、身体的、精神的な要因、環境的要因も症状の増悪に影響を与えるようだが、中でも発症後は、精神的なものによって症状が大きく変化する。

初期の症状としては、このように単純性アトピー性皮膚炎といえる症状で、それらの要因によって「増悪」と「軽快」を繰り返すだけで、本来はいずれ成長とともに「自然消退」することが可能な疾患といえる。

一般的に小児に多い皮膚炎と理解されがちだが、それまでまったく症状のない人々にも日常生活の中で悪条件(精神的ストレス、抑圧、睡眠不足、疲労蓄積等)が続くと突然発症することがある。

それらの人々もやはり同様にアレルギー体質者である。しかし、すべてのアレルギー体質者がアレルギー疾患に罹患するわけではない。その中でも自律神経失調の症状が強く出た場合にこの病気は発病している。

つまりアトピー性皮膚炎は、リウマチ・膠原病患者と同様に、アレルギー過敏症の体質者が、長い間の不規則な生活習慣の積み重ねにより徐々に自律神経失調の症状を強くし、免疫力・抵抗力を低下させ、さらに精神的・身体的に極端に落ち込むようなライフイベント(受験・事業の失敗、離婚、身内の不幸、家庭内・職場のトラブル、失恋、人間関係の悩みなど)に遭遇することによって「発症」している。

アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患にかかわらず、どのような病気でも、発症初期段階での治療のあり方、養生の仕方によって「治る」か「治らない」か、そのすべてが決まってしまうといっても過言ではない。
しかし人は身体に異常な状態が出現した時、なぜそのような異常が現れ始めたのかを考えようとはしないし、それらの原因に「気付く」ための努力をしないものである。

毎日自分がどのように荒れた生活をしているか(病気の原因)は棚に上げて、身体に異常な状態が現れたこと(病気の症状)だけに気を注ぎ、いよいよどうにもならなくなると医者に、薬に頼って治そう、また治してもらおうと考えるのである。

このように自己の日常生活を省みず、他への依存心が強く、他力本願的な考え方がいずれ命取りになることにまだ気付いてないようだ。

発症後間もない初期症状のアトピー性皮膚炎や喘息などは、一切薬物を使用しなくてもそれなりの「養生」をすれば消退する。

第一に毎日睡眠を充分にとる、第二に入浴を重視し不感温度でしっかり身体を温め、汗をかき、「湯治」を日課とする。アトピー性皮膚炎の場合は皮膚のスキンケアを的確に行う。第三にバランスの良い食生活を心がけ、暴飲暴食をしない。このようなことを施せば、自然にそれらの症状は「消退」するし、また人間の身体はそのようにできているのである。

つまり何が大切かを良く学習理解し、それらを実践すれば必ず健康体に戻る。これは人間として行なうべき「養生」の学習であり、アトピー性皮膚炎や喘息に限らず「癌」「糖尿病」などの生活習慣病にも全く同様に、このような考え方が大切である。

まさに病気を治すか、また難病にして生涯を生きていくか、また短い命で終わるか、運命の分かれ道であるといえるであろう。