小川秀夫の温泉湯治物語

世直しを夢見た。安保徹先生との約束

私は一大決心をして連絡を取り、新潟大学大学院――あの伝説の免疫学者・安保徹先生の研究所へと足を運んだ。

扉を開けた瞬間、鼓動が高鳴る。いざ、先生の前に立ち、

「安保先生、アトピービジネスバッシングの際にはご擁護いただき、心から感謝しております。それに、日本オムバスも今なお応援してくださって…」と挨拶を始めるや否や、

「小川君、いいよ、そんな堅苦しいのは」と、先生がニコリと笑った。

「君の書いた本、全部読んでるんだ。ほら、あれだ、自律神経と病気の関係を解いたところ。あれはね、医者の視点からじゃ到底出てこない発想だよ。実はね、あれを読んでから僕、自律神経の研究が大きく前進したんだ」

一瞬、耳を疑った。あの安保徹先生が、医者でもない私の本が、研究の手助けに――?嬉しさと驚きと、何とも言えない熱いものが胸にこみ上げる。

「いやぁ、今日初めて会ったとは思えないよ。まるで昔からの友人に再会した気分だ。よし、今夜は飲みに行こう。語り明かそうじゃないか!」

そのまま私たちは先生行きつけのスナック「あけみ」へ直行。深夜の街にネオンが灯る中、話は尽きることなく続いた。あのときの騒動、その後どうなったか、そしてこれからの夢――語って、語って、語り尽くした。

「小川君、今ね、すごい発見をし○×△☆♯トコンドリアが○×△☆♯♭●□▲★※の○×△☆♯♭●□▲★※」

「….○×△☆♯♭●□▲その本、僕もう書いたよ。僕の勝ち○×△☆♯♭●□▲ 」

もう先生は完全に出来上がっていた。私も負けじと酔い、ふたりしてデレデレの上機嫌。

「もし僕がここクビになったら○×△☆♯♭●□▲★※小川君の摩周苑に研究所作○×△☆♯♭●□▲★※一緒に研究やろう○×△☆♯♭●□▲★※」

「医療界を変えないと○×△☆♯♭●□▲★※、日本の医学、立て直さな○×△☆♯♭●□▲★※」

いやもう、2人とも呂律が回ってない。

そんな熱い志を、朝の三時まで何度も交わした。スナックのママが苦笑いを浮かべながら言った。

「安保先生、閉店ですよ」

――あの夜、世界を変えるような夢が、酔いと共に煌めいていた。