泣いてる暇なんて、ありゃしなかった。
気づけば、無心でキーボードを打っていた。まるで全身から火花を散らすみたいに、今の私のすべてをキーボードに叩きつけていた。考えなんて、もう垂れ流し状態。魂ごとぶつけてやった。
季節は12月。癒しの森はすっかり丸裸、葉を落として雪に身を包んでいた。木も草も、黙って死んだフリして春を待ってる。
そんな中、こっちは温泉なんざ見向きもせず、パソコンにむかい続けた。ぬるま湯に浸かってる場合じゃねぇ、こっちは命を削ってんだ。最後の作品になったっていい。どうせ70歳超えたジジイだ。上等だろ?
温泉湯治で超健康を保ってた身体も、24時間ぶっ通しで書かされちゃあ、たまったもんじゃねぇ。けどな、止まったら終わりなんだ。立ち止まったら涙があふれて、パソコンの画面が見えやしねぇ。だから、キーボードを打って、打って、打ちまくった。
あ、そういえば30分くらい仮眠したこともあったっけな。でも、それも夢だったかもしれねぇ。寝たのか倒れたのか、よく覚えてない。
気づいたら、涙が顔を伝って、冷たくて目が覚めた。なんだこれ、寝ながら泣いてたのかよ。
でも、書ききったんだよ。
「体を温めればガンは消える」
安保先生、聞こえてますか?
勝手に始めますよ、先生の弔い合戦。
命がけで、書きました。