術後2ヵ月から3ヶ月、5ヶ月と経過すると、なんとかそれなりに活力も出てきて、精神的にも回復が始まり、落ち着きを取り戻し、前向きな生活、生き方ができるようになってくる。実はこの時期、がん細胞が一時的また継続的に減少したり、人によっては消失が顕著になったりすることがある。
これを「寛解期」というが、これらは抗がん剤等によって痛めつけられた体に自然治癒の「自己再生機能」の働きが活発になってきたからである。こような「寛解期」が、患者にとってまさにがんを完全克服できるか、再発して増悪し取り返しのきかない状態に陥るのかの大切な分岐点となる時期である。したがってこの寛解期を上手に利用すべきである。この時期のリハビリに残りの人生のすべてが、かかっていると言っても決して過言ではないからだ。
例えば体の調子がすこぶる良くなり、すっかり「がん」が治ったような気になって、早々と職場復帰し、あれこれと忙しい生活の中に身を置き始め、また我儘な生活に戻ったりして体に思いやり、労わりの気持ちをなくしてしまい、再び疲労の蓄積が限界に達すると、つまりこの寛解期の過ごし方に失敗すると、二度と生きる歓びが得られなくなってしまうことになるのだ。
がんの手術に成功しても大方の患者がこの時期の過ごし方、養生に失敗している。仕事への復帰を決して急いでならないし、また焦ってはならない、しかし油断は大敵だ、大手術によってがん腫瘍は完全に取り除かれ手術は成功した。患者の体は日増しに体力を回復し、元気を取り戻して経過はまずまずといえる時期ではあるが、まだ病み上がりで免疫力が低い体であることに変わりはない。